価値観の「固定化」の良し悪し

ーーー価値観や考えを固定化しないためにできることはありますか?

田中:ただ、カテゴリー分けをしてはいけないと言い切るのも難しい気がしていて。なぜかというと、研究において特定の傾向や現象を理解するためには、分類や定義が必要だからです。しかし、それが固定観念や単純化を生むと、見逃しや偏りが生まれる可能性もあります。

例えば、「パワハラ」という言葉は、言葉で明確に定義されることで問題が認識されるようになる一方で、カテゴリーが強調されすぎると個々の状況や背景を見落としてしまうこともありますよね。

自分の言葉で他者の意見を解釈する際には、その意図や文脈を尊重し、単純なカテゴリー化に陥らないようにすることが大切です。

ーーー今後、ヨコク研究所で新たにやりたいことはありますか?

工藤:大学院での研究の延長として、アカデミアとの接点を持つことで、ヨコク研究所の活動に広がりが出るのではないかと考えています。民俗学的な視点で働く環境や暮らしを読み解くという姿勢は、実践的なプロトタイピングにもつながりそうな感触があります。

田中:現在進めている文化比較やプロトタイピングを通じて、自立協働社会の理解を深めるというアプローチを今後も続けていきたいです。実際に社会がどう機能するのかを実験しながら探っていくことで、より具体的な知見が得られると思います。

自律協働的な組織や社会があるとして、その周辺でどういうアクションや感情を受け取るか、まだわからないことも多いので、これからもリサーチを続けていきます。