コクヨ株式会社が2022年に発足した「ヨコク研究所」。

ヨコク研究所は、多様な人々がともに働き、共に生きる社会を目指す「自律協働社会」の探求をミッションに、リサーチとプロトタイピングに取り組む研究組織です。前編では、研究員の工藤沙希さんと田中康寛さんに自律協働の兆しへの取り組みを紹介していただきました。

後編となる本記事では、ヨコク研究所が生み出すアイデアの源をたどるべく、研究所メンバーのバックグラウンドや活動における姿勢についてインタビューします。

自ら意味づけするためのレッスン

ーーーヨコク研究所は一言で「リサーチ&デザインラボ」と説明されていますが、詳しく教えてください。

工藤:ここでいう「デザイン」とは、「プロトタイピング」すなわち実装や実践のことです。「リサーチ」は文字どおり、調査や研究を意味します。

ただリサーチした研究結果をインプットするだけではなく、主体として私たち自身が実際に試してみたり、未来の社会に向けた構えを実装したりする「プロトタイピング」までを含んでいるということです。。

ーーー「プロトタイピング」を表すような、具体的な取り組みはありますか?

工藤:ひとつとして、「採集」行為を切り口にした「GRASP」というプロジェクトがあります。この活動の最重要事項は、目的に向かってまっすぐに進まないことです。直線的なプロジェクトやリサーチの手法を問い直し、採集という探索的な手法で置き換える実験です。概念的な話だけではなく、実際に山に入って拾った石を削って顔料を作ったり、オフィスがある品川の街を歩いて音を採集したり、という身体的なレベルから考えています。

工藤:GRASPの姿勢を社外の参加者にひらく場として、同じ映像を異なる条件で7回連続で観るという実験的な鑑賞会を行いました。

真っ暗闇のなかに数分放り出された後に映像を観たり、異なる色の温かいスープを胃に落とした後に映像を観たり、即興アテレコをして映像を観たり、環境や身体の条件を変えることで、同じものを新たに解釈し直す試みです。