そこで、今年はインドネシアの「集まる」行為の方法について調査をしようと考えました。

「働く」にアプローチ

ーーーほかにも、定量的なリサーチを行っているとおっしゃっていました。

田中:「ウェルビーイング文化比較研究」です。このプロジェクトは、京都大学のウェルビーイング研究者の内田先生と約1年半にわたって共同で進めているもので、日本・アメリカ・イギリス・台湾の4エリアが比較対象です。

それぞれの地域でどのような価値観や働き方が幸せと感じられるのかを、主にアンケート調査を通じて分析しています。

ーーーこの研究にはどのような目的がありますか?

田中:工藤が説明した2つの取り組みとは異なり、本研究では「働くこと」に焦点を当て、将来どのような働き方が理想的かを紐解いています。

日本では周囲との協調が重視されがちで、「空気を読む」ことが働きやすさにつながるとされている一方で、企業はより創造的でコラボレーションを促す環境を求めています。

田中:そこで、日本独自の職場文化を生かしつつ、協調性と個性を同時に育む方法を模索しようと考えました。こうした職場のあり方を見直し、将来的にはどのような場が必要かを探求するのが、この研究の目的です。

人々の「働く」「暮らす」「学ぶ」を起点に

ーーーコクヨのこれまでのビジネスと新たに発足した「ヨコク研究所」はどのようにつながっていますか?

工藤:むしろ直接的な距離が離れていることが研究所の意義のひとつかもしれません。コクヨはメーカー企業であり、ものづくりは会社の中核を成す大切な領域です。

そんななか、ヨコク研究所という組織のミッションは商品の開発研究ではなく、長期的な「自律協働社会」のリサーチと実践です。

未来の社会のオルタナティブを示すべき機関が目の前の需要に応答していては、予定調和的な未来の外側を提示することはできないので、結果として自然と出島のようなポジションになっています。