一見するとバラバラでまとまりがないように思えるかもしれませんが、どのテーマも自律・協働の兆しを探ることを目的としています。例えば「鳥類学」という切り口は、鳥という存在が人の暮らしにとって身近な自然であればこそ、アカデミアの外にいる市井の人々の在野研究者としての側面や、自然と互いにケアし合う可能性に光を当てることができます。

ーーー編集はどのように進めているのでしょうか。

工藤:編集を生業としていない人たち──現在ですとヨコク研究所員はもちろん、日ごろエンジニアや建築家、キュレーターとして働いている「外部編集員」たちが、個人の関心や自分の周りの話題から「最近これがすごく面白くて…...」と感じるテーマを持ち寄って編集しています。

ーーー「YOKOKU Field Notes」についても教えてください。

工藤:「YOKOKU Field Notes」は、自律協働の兆しを個別の地域から探るプロジェクトです。先ほどご紹介した「WORKSIGHT」とは異なり、実際に私や田中などの研究員が現地に赴き、活動している人々に直接取材を行い、それをもとに自分たちで執筆しています。

ーーーどのような地域へ取材しに行くのでしょうか。

工藤:これまで台湾と韓国で取材を行いました。2024年はインドネシアに行く予定です。その理由は、協働という観点から”コレクティブ”について調べると、インドネシアのアートコレクティブ「ルアンルパ」が芸術監督に抜擢された2022年に開催されたドイツのアートフェスティバル「ドクメンタ15」を始め、現代美術領域でのインドネシアの情報が沢山見つかります。

実際、1998年にスハルト政権が崩壊し民主化が進んだことでそれまで難しかった「集まる」という行為が可能になり、コレクティブ文化が盛り上がったという背景があります。加えて、コレクティブという西洋の現代美術の文脈を充てがう以前から、インドネシアにはヴァナキュラー(その土地固有の)な集まり方の作法があったのではないかと。