そこで、創業以来の企業理念「商品を通じて世の中の役に立つ」を2021年に115年ぶりに刷新し、「be Unique.」という言葉を掲げます。この企業理念の先にある、目指す社会像としての「自律協働社会」がヨコク研究所の立ち上げのきっかけです。

主体として「予告(ヨコク)」する

ーーーコクヨが目指す「自律協働社会」について詳しく聞かせてください。

工藤:コクヨの企業理念「be Unique.」は、創造性を刺激し、個性を輝かせることを目指すという趣旨のものです。その行き着くところは、多様な価値観を持つ人々が個々の自律を前提に、他者との協働の中で共に生きられるような社会像です。その社会モデルを「自律協働社会」と名付け、旗印としています。

ーーーなぜ「ヨコク研究所」なのか、由来を教えてください。

田中:これまでは海外の事例を参考にして新しい商品を取り入れることで、「この商品を作ればお客様に喜んでもらえる」と、道筋が予測できました。しかし、今の時代は未来が不確実で、従来のように周囲の情報を集めて、それをもとに商品やサービスを作り出すのが難しくなってきました。

つまり、客観的な情報だけでなく、「自分たちはこういう未来を作りたい」という主観的なビジョンが重要ということです。

未来を傍観者として「予測」するのではなく、自らが生きる未来を主体として「予告」することで、目指す社会を描き、その未来に必要なサービスや製品を作って(研究して)いく。そんな想いから「ヨコク研究所」という名前が付きました。

「自律協働社会」の兆し

ーーーヨコク研究所の具体的な取り組みについて教えてください。

工藤:例えば、プロの編集者のみならず、アマチュア編集者が参加してつくるオウンドメディア「WORKSIGHT」などは、ご存じの方もいらっしゃるかもしれません。

工藤:「WORKSIGHT」は週刊のニュースレターとプリント板の季刊誌を中心に記事を編集しているのですが、この書籍版のテーマを眺めると、「植物倫理」「ゾンビ」「フィールドノート」「記憶と認知症」「詩」「ゲーム」「料理」「鳥類学」など、多岐にわたるジャンルを取り上げています。