それに比べて、ハイテク大手各社が膨大な設備投資をするようになってからの設備投資額の伸び方は、私にはいったいどこにそんな莫大なカネが吸いこまれていったのか、皆目見当もつかないことばかりです。

1960年代半ばまでは、世界中の企業が「計算なんか計算尺と手回し計算機があればこと足りる」と思っていました。手回し計算機とはいくつかの目盛り幅の違う対数尺を並べて円筒に刻んで、それをガラガラ回して答えを出す機械というより器具のことです。

それが60年代末にかけて劇的に変化し、中堅企業でも本社社屋の1部屋一杯を使い、大手なら本社ビルの2~3部屋をぶち抜いて床補強をしてIBMが製造したメインフレームコンピューターを入れたり、コンピューター専用に近い研究棟を建てたりという騒ぎになったのです。

メインフレームコンピューター導入のピークとなった1969年には、IBM1社の売上が全米設備投資総額の17%に達するという、今も破られていない記録を樹立しました。

それでも、ハイテク大手各社の設備投資総額がいくらぐらいになるか調べてみようと思った人がひとりもいないほど、ハイテク産業の設備投資額は低かったのです。

1990年代末はありとあらゆるところに張り巡らされた銅ケーブルの在来通信回線網から、インターネット通信への画期的な変革が進んでいました。

回線で繋ぐ幹線にしても、人の頭ぐらいの口径の銅回線を被覆までふくめて小指の先ほどの口径の光ファイバー回線で十分代行できた上に音声や映像の歪み・ひずみも少なくなったし、無線でも送受信が可能な地域が広がったのです。

その頃でも、ハイテク大手全体の設備投資額はたかだか150億ドルで、約900億ドルだった石油・ガス業界設備投資総額の6分の1で十分だったのです。

2020年代初頭に、ついにハイテク大手12社の設備投資総額が石油・天然ガス業界の設備投資総額を抜いたと世間的には言われています。でも、私はほんとうにそうなのか、大いに疑わしいと思っています。