下段の情報産業の求人数を見ると、コロナ騒動での一過性の落ちこみからの反発力は大きかったけれども、2023年のうちにコロナ騒動直前の水準を割りこみその後もだらだら下げ続けていることがわかります。

これも情報産業全体の業績が好調であれば「生成AIは冗員削減に貢献した」と受けとめることもできるのですが、フリーキャッシュフローが下がりつづけている現状では、単純に不景気で求人が下がっていると見るほうがすなおな解釈だと思います。

次にご覧いただく2コマ漫画と文章の組み合わせは、なかなか風刺が効いているのではないでしょうか。

アメリカ知識人の中でもエリートに属する優秀な知的能力を持っていなければなれないはずの企業重役連中が、世論調査に頼るべきではない数学問題の正解を世論調査に求める生成AIを信頼する一方、これこそ世論調査に耳を傾けるべき現場で働く人たちの声には耳を塞いでしまう嘆かわしい風潮がよく出ています。

それでもなお業績絶好調を唱えるエヌヴィディア

こうした生成AIをめぐる八方ふさがりとも言うべき逆境の中で、なおも強気一点張りの経営戦略を貫こうとしているのが、エヌヴィディア創業CEOのジェンスン・フアンです。ただ、ここに来てふたつ、彼の思い描くバラ色の未来に対する不安材料が出てきました。

ひとつは、とうてい公称レベルでのGPU普及度とは相容れないほどの顧客層の偏りであり、もうひとつは独占禁止法違反疑惑です。まず、前者から見ていきましょう。

エヌヴィディア総売上の44.59%がたった4社の顧客から得た売上であり、6大顧客に対する売上となると総売上の56.25%に達しています。「全米どころか世界中からGPUへの買い注文が殺到している」という発言がほんとうなら、どうしてこんなに特定顧客への売上が大きいのでしょうか。

しかも重要顧客リスト第3位のスーパー・マイクロ・コンピューターは、一時話題になったコア・ウィーヴのように営業実態があるのかどうかさえ怪しい幽霊のような企業ではありません。