首相以下、辞典の参照をしないまま長らく空間距離2mとしてソーシャルディスタンスを強調されてきた結果、せっかくの社会学的な資産は誤用されたままで現在に至っている。
社会学を生業としてきた私にとっては、コント以来の社会学の歴史170年でも痛恨の5年間であった。その経験から、もう少し社会学の発信力が強くならないかと試行錯誤するうちに、新たな概念が日本社会にも社会学にも侵入してきたことに気が付いた。
それが国家論で時折見かける「社会国家」(仏 État providence、英social state)概念である。
2. 社会学の国家論
アソシエーション、制度、利害マッキーヴァーとページによる社会学のテキストは世界的に広く読まれてきたが、国家を筆頭とするアソシエーションは、「単一の利益かもしくは共通のまとまった利害の追求のために組織された集団」(MacIver and Page,1950:12)であるとそこでは明記してあり、表1のような内容が日本では社会学の伝統として現在までも受け入れられてきた。
多くの場合、国家は「機能」の観点から「職業・経済・文化のうち、単一の共通せる利害をもつ成員をむすびつけている」(マッキーヴァー、1949=1957:69)ものであり、会社、組合、団体、学校、職業集団とともに国家(state)が位置づけられる。
このうち、国家は最大・最強のアソシエーションである(MacIver and Page,op.cit:453)。そのため社会学では国家を機能論的に理解して、政治、経済、社会、文化、福祉などの全体社会システムを動かす機能が、アソシエーションのうちでもっとも優れているとみなされてきた注4)。
社会学による「国家」の定義集以下、少しばかり社会学の立場からの代表的な「国家」の定義を紹介しておこう。