一方、SAFは2023年に6億L(=60万kL)生産され、2024年にはその約3倍の18億7000万L(=187万kL)に達し、航空燃料需要の0.53%になる見込みと発表されている。国交省の2030年目標値は、世界全体では今年中に達成されそうだ。しかし、価格は高止まりしているようだ。

この高いSAFに頼るのは、航空業界特有の事情もある。航空業界は現在、世界全体のCO2排出量の約2.5%を占めているが、これを減らそうとしても、航空機の電動化はバッテリー重量の制約で事実上困難であり、水素を航空利用するには、空港などでの供給インフラに大きな変更が必要である。それで上記の2)既存インフラが使える、と言うのは大きなメリットなのだ。

しかし現状のSAFは値段が高く、供給量もごく少ない。そこで、中東・アフリカ地域でSAFを生産しようとの目論見が考えられている。しかしこれでは、上記3)国産原料でつくれる、から離れ、他の資源と同様に輸入頼み体制で終始することになる。もっとも、その有望な中東でさえ、課題は山積しているそうだが。

ここで、問題点を整理してみたい。上記5種類のSAFは大別するとA)バイオ燃料系、B)合成燃料系、に分けられる。前者としては上記1)〜3)が相当し、それらはまた、エタノール系と非エタノール系(バイオディーゼル等)に分けられる。エタノール系は第一、第二世代がそれに当たる。廃食用油や微細藻類などからの油分等は、非エタノール系である。

B)合成燃料系としては、上記の4)と5)が該当し、前者は廃棄物原料の利用だが、廃プラは化石燃料由来だし、紙や木くずは木質系バイオマス由来であり、他用途との競合もある。故に入手自体が難しくなる可能性がある。

しかしそれ以上にこの燃料の基本的な問題点は、原料を高温でガス化するための必要エネルギーが大きく、得られた燃料価格を押し上げるだけでなく、エネルギー収支的にも必ずしも有利でない点である。