冒頭に、ちょっと面白い写真を紹介しよう。ご覧のように、トウモロコシがジェット機になって飛んでいる図だ。

Wishful Thinking in the Stratosphere

要するに、トウモロコシからジェット燃料を作って飛行機を飛ばす構想を描いている。ここには”Jet Fuel from Corn Sounds Sustainable, but Isn’t Much Cleaner”(トウモロコシからの燃料は持続可能なように聞こえるが、それほどクリーンではないよ)との添え書きがあるけれども。

この種の航空燃料は一般にSAFと呼ばれている。SAFはSustainable Aviation Fuelの略で「持続可能な航空燃料」と訳される。

従来のジェット燃料が原油から作られるのに対して、廃食用油、サトウキビなどのバイオマス燃料や都市ゴミ、廃プラスチックを用いて生産される。廃棄物や再生可能エネルギーが原料のため、従来のジェット燃料と比べて約60〜80%のCO2削減効果があるとされる。故に航空分野ではCO2削減に最も効果が高いとされており、世界各国で官民挙げてSAFの利用に取り組んでいる。

ただし、2020年の世界のSAF供給量は約6.3万kLに過ぎず、これは世界のジェット燃料供給量の0.03%にしかならなかった。そこで、このSAFの生産量を飛躍的に高めねばならんということで、我が国の国交省は「2030年に必要なSAF量を外航分を含み170万kLと見込む」としている。なお、この量は2019年のジェット燃料約890万kLの19%に当たる。

これでも全燃料のまだ1/5にしかならないわけだが、2030年と言えばあと6年である。この「見込み」には、果たして見込みがあるのか?

ネットでSAFを調べると、資料は沢山出てくる。例えばJOGMEC(独エネルギー・金属鉱物資源機構)の説明が分かりやすい。これによるとSAFの主な原料と製造方法は次のようになる。

主な原料 製造方法 1)廃食用油 使用後の食用油や植物油などと水素を使って製造(HEFE) 2)第一世代バイオエタノール(コーン、サトウキビ等) コーンやサトウキビを発酵させて作ったアルコールから製造(ATJ) 3)非可食原料(ポンガミア、微細藻類、第二世代エタノール(古紙等)等) 藻や古紙などから油分を取り出し、水素を使ったり、発酵させてアルコールから製造(HEFE、ATJ) 4)ごみ(廃プラスチック等) 原料を蒸し焼きにしてガス化し、炭素1個の分子と水素分子にばらばらにした後、再びつなぎ合わせて液体燃料を製造(ガス化FT合成) 5)二酸化炭素、水素 二酸化炭素と水素を合成して製造。いわゆる「合成燃料(e-Fuel)」(FT合成)