この説明では翌日の3,217円の暴騰のほうがよく説明できる。下げは急だったが、一方では出来ズ、にはならず現物買い。指値買いが対応していた。むしろ8月5日だけみると、AIの存在は感じられない注2)。

このように諸説あるが、いずれも部分解のきらいがある。日経平均株価の年初来上昇率が7月16日の時点で41%と世界の市場の中で突出していた。アメリカの代表的な指数S&P500は15%程度だ。

変動幅が大きいのは、一般的に、規模の小さな厚みのない市場の特徴だが、やせても枯れても世界第3位の市場には当てはまらない。ここには今回に特有の要因・背景があるはずである。

総裁の記者会見

事の起こりは7月31日の日銀総裁の発言だった。政策決定会合の後に総裁が記者会見をするのは慣例だが、ここに思わぬハプニングが起こる。

会見の前半はシナリオどおりに進む。

短期金利の目標を15%上げて、0.25%にする。 国債の買い入れ額を3兆円程度にする。

『The NEXT』の7章に書いたが、1は中央銀行の庭である。2は遠い庭だが、政府との癒着が常態化した今日では、よく見られる光景だ。国債価格の管理、それは国債の円滑な消化に不可欠、そして短期金利操作の有効性を高める意味でも長期市場への介入は重視されている。

これで会見が終われば何事もなかったのだろう。思わぬ事態が起こる。①、②を聞いたら、当然聞きたくなる質問が記者から出た。

Q. 秋以降にも利上げを続けるのか? A. 今後も利上げの可能性はある。

可能性を言っただけ・・だが、聞き手の大方は、ゼロ金利の終わり、金利のある世界の到来、を感じ取ったのである。総裁は以前に「0.5%が壁だとは思わない」などと発言していたから、聞き手は“強い利上げ志向”を読み取ったのかもしれない。酷な言い方だが、市場の最前線にいる記者たちの反応を読めなかったのだろう。学者は、職業柄、質問には答えたくなるのだ。