そのエルゲルージ氏の1マイル記録を破る可能性を秘めた現役選手は、東京五輪1500メートル、パリ五輪5000メートルの金メダリスト、ヤコブ・インゲブリクトセン選手(ノルウェー)です。

彼の自己記録は、1500メートルが3分26秒73、1マイルが3分43秒73と、いずれもエルゲルージ氏の持つ世界記録に迫っています。

このように、海外では五輪種目である1500メートルのトップアスリートも1マイルに本気で挑む文化があるものの、日本ではマイナーな存在です。

ちなみに、日本の現役選手のFour-Minute Mile Runnerとしては、東京五輪、パリ五輪の3000メートル障害に出場した青木涼真選手(1マイルの自己記録:3分54秒84、所属:Honda)らがいます。

日本の現役トップ選手の1マイルの記録が3分50秒台であるという事実から伺えるとおり、バニスター氏の記録から70年経っても、1マイルを4分切りで走ることが、日本の中距離走選手にとっては簡単ではないことがわかります。

5分未満の激しい運動に取り組むアスリートも長生きできる

そんな1マイルを4分未満で走るためには、ランナーは日常的に激しいトレーニングをする必要があり、レースでは心臓に極めて高い負荷がかかります。

激しい持久系の運動トレーニングが健康に良いのか、悪いのかは様々な見解があるものの、近年発表された多くの研究では、持久系アスリートは一般集団に比べると、長生きなことを報告しています。

その一方で、多くの先行研究では、5分以上、長い場合には数時間を超える競技時間の持久系アスリートを対象としており、1500メートルや1マイルのような、5分未満でレースが終わる競技に取り組むトップアスリートを対象とした検討は不十分でした。

そこで今回、ハイコウスキー教授らは、1マイルを4分未満で走った最初の200名の生存状況を一般集団と比べることで、心臓に繰り返し激しい負荷がかかる競技に取り組むトップアスリートが長生きできるのかを調べました。