慰安婦は当時の国際法上の奴隷ではないことについては裁判所も認めています。

近代的所有権概念からすれば、所有権の客体でしかないなら所有権者によって傷害を負わせられても自分の物なので違法でも犯罪でもないし、他人から危害を加えられたら持ち主から所有権に基づく請求をするはずですが、そういう扱いではありませんでした。

(大審院大正7年10月12日判決「損害賠償請求ノ件」は、抱主が芸妓を誘拐した第三者に対して、債権侵害を理由として損害賠償を請求したケース)*5

慰安婦は対価を受け取っていましたし、しかも同時代の他の軍人などの職種よりも遥かに高給でした。慰安所規則が掲示され、利用客には避妊具が支給されて装着が義務付けられました。医師による定期的な診察を受け、衛生環境を維持されるものとして運営され、そうするように当局から指導されていました。

一部に悲惨な境遇の者が居たとしても、それは慰安婦の募集取締規定や慰安所運用規則に反する違法な扱いであり*6、一般的にそのような扱いが為されていたとは言えません。

慰安婦の実態:契約関係を解説したラムザイヤー論文

いわゆるラムザイヤー論文⇒Contracting for sex in the Pacific War – ScienceDirect

この2020年12月に掲載された論文は、日本軍の慰安婦を法経済学の観点からどのような契約関係にあったのかを明らかにしています。

この論文にある事実関係・契約の中身を見ていけば、慰安婦は実態としても法的にも「性奴隷」などと呼べるものではないということわ分かります。

この論文の全和訳については、論文掲載後に多数の学者らから難癖を付けられたがその主張の悉くが破綻していることを援護的に主張した【「慰安婦」はみな合意契約していた 有馬 哲夫】に掲載されています。ここではその要旨を紹介します。

 要旨

慰安所と呼ばれる戦時売春所を巡る韓国と日本の間の論争は、そこに含まれる契約の力学が曖昧にされている。この力学はゲームの理論の基礎である「信用できるコミットメント」のロジックをはっきり反映している。売春宿の側と娼婦死亡者は、ある問題に直面した。売春宿は契約の枠組みに信用が得られるようにコミットしなければならない。(ⅰ)その枠組みは、その仕事をしることで娼婦が被る悪評を埋め合わせるだけのもので、(ⅱ)監視がない状況で過酷な仕事をしながらも、一生懸命になれるインセンティヴを与えるものでなければならない。売春宿経営者が娼婦に対して、将来得られる収入を誇張しがちなのを知っているので、かなりの額の前渡し金を要求した。抱主はこの要求を呑む。前線に向かうことを知っているので、彼女たちは最長の勤務時間を望む。その代わり、彼女たちが仕事を怠ける動機を持っていることを知っているので、経営者は女性が一生懸命働くような契約の枠組みを必要とした。女性と売春宿経営者は、表面的には相反する要求を満たすため、(ⅰ)かなりの額の前渡し金と(ⅱ)充分な収入をあげた場合の年季の短縮を組み合わせた年季契約を結んだ。