Péterさんの話からは、名建築家・前川國男の「生えている樹木はできるだけ伐るな」という名言を思い出した。豊かな街路樹のメリットは、日陰による冷却効果と歩きやすさだけではない。「都市のHEPAフィルター」として機能し、空気中を飛散する塵やNO2、SO2、一酸化炭素、オゾンを除去するうえ、二酸化炭素の隔離にもなる。

グリーンインフラ強化の取り組みは、上述のパリ以外でも行われている。ニューヨーク市の「アーバンフォレスト・アジェンダ」は、2035年までに同市の樹冠被覆率30%達成を目指す。夏には気温50度に達することもあるサウジアラビアが2019年に開始した「グリーン・リヤド・プロジェクト」は、首都リヤドで2030年までに約750万本の樹木を植栽するという計画だ。

もちろん、樹木の維持管理と安全性確保にはコストがかかる。コスト増加に市長が難色を示していたニューヨーク市では、市民ボランティアが「スチュワード」に登録して樹木の手入れ作業に参加している。手入れ活動の開催日時はNYC Tree Mapで公開されるため、市民は気軽に参加して活動を楽しむことができ、市としても管理コスト削減につながる仕組みだ。

Image Credits:NYC Parks

東京や大阪など日本の大都市は世界の潮流と逆行し、街路樹を減らしているのが現状。greehillのソリューションを活かしつつ、ニューヨークのボランティア活動を参考に、東京や大阪でも猛暑で市民の生活と健康を守るグリーンインフラを構築できないだろうか。