上段の模式図で言えば、日本で円を年利0.5%で借りて利回り4.5%のオーストラリア国債を買えば、借りた日本円の金利0.5%を払っても、年間4%の利回りが得られるわけです。
そのうえ、日本政府・日銀がつい最近まで公言していたとおりにどんどん円安が進めば、円建ての借金の元利返済負担は円安分だけ目減りしているので、この投資の最終利回りはさらに上がることになります。
どこに落とし穴があるかと言えば、ずっと円安方向に進んでいた為替相場が突然円高に転換すると、場合によっては買った金融資産の総合利回りでは埋め合わせられないほど円の借金を返済するときの負担が増えることです。
そうなると、たとえそれまでは順調に期待通りの利回りが出ていた金融資産でも、借りた通貨の値上がりによって最終損益がマイナスにならないうちに手放す投資家や、返しきれないほど損失が膨らむ前に放出する投資家が出てきます。
損が出ないうち、あるいは損が少ないうちに円建ての借金を返そうとして買った金融資産の投げ売りが始まると、そこでまた借りていた円を支払うための円需要の増加で円が上がるという悪循環に陥るわけです。
重要なのは、円高→目標通貨資産の投げ売り→さらなる円高という悪循環でいちばん被害が少なくて済むのは、日本国内に居住して日々の生活を円で賄っている人たちや、日本を拠点として損益もバランスシートも円で記載している企業です。
日本居住者や日本を拠点とする企業にとっては、どんなに円高が進んでも自分たちも円で暮らしているので円建て借金の元利返済負担は増えないからです。
また、借金が返せるか返せないかの瀬戸際という場面になると日本が一番有利だということが、下段のグラフにも出ています。日本は対外純資産(自国から諸外国への投融資総額から諸外国から自国への投融資総額を引いた数値)が世界一大きな国です。
外国の投資家からの投融資の返済を迫られる危険がいちばん少ないのが日本だということです。一方、アメリカは2位イギリスの20倍前後に当たる約18兆ドルの対外純債務(外国から自国への投融資から自国から外国への投資を差し引いた金額)を抱えています。