例えて言えば、ヨーロッパの中でも北欧などでは男女の労働力参加率にほとんど差がないのに比べると、結婚から子育て期の女性の就労率が激減するので、5人制のバスケットボールや6人制のバレーボールでひとり永久欠員で戦っているようなものだとさえ言われてきました。

最近では次の3枚組グラフの上段が示すとおり、夫だけが働き妻は専業主婦という世帯はほぼ半減し、欧米諸国と比べた場合11人で戦うはずのサッカーでひとり永久欠員がいる程度に就労率の差は縮まっています。

ですが、その中身が問題です。妻もフルタイムで働いている世帯は1985年の461万世帯から2021年の486万世帯へとたった5.4%増えただけのほとんど横ばいで、228万世帯から691万世帯へと3倍増したのは夫だけがフルタイムで、妻はパートという世帯なのです。

これは扶養家族控除枠といった狭い範囲の問題ではなく、「寿退社」とか「第1子出産退社」とかを制度化して、女性が一生自分のキャリアを追求することを妨害して家庭に閉じこめようとする陰謀のようなものがあったようにしか思えません。

じつは江戸時代中期から明治初期まで、日本の女性たちの就労環境はこれほど劣悪ではありませんでした。その証拠と言えば語弊がありますが、左下の離婚率グラフを見ると明治初期の離婚率は今よりずっと高く、女性が自立して生きていける仕事が比較的多かったことを示唆しています。

明治中期以降は、当時の西欧では上流階級になるほど「妻は家庭に入って何も有益な仕事をしないことが夫のステータス」と考えられていたことに影響されて、とくに高い教育を受けた女性たちの就業機会が制限されていったのです。その結果、離婚率も下がっていきました。

ただ、明治初期までは女性の就業機会が比較的多かったと言っても、必ずしも男女の地位が平等だったということではありません。

右下のグラフに出ている明治期から第二次大戦前後までの婚外子の多さは現代的なシングルマザーが多かったからではありません。