このグラフでおもしろいのは、EUイギリスというたった2%のシェアしかない地域が別建てになっていて、日本・韓国・台湾といった東アジア諸国がその他大勢に繰りこまれていることです。

反対にしたほうがはるかに意味のあるグラフのなるでしょうが、まあヨーロッパの知識人には、実績では何の意味もないほど小さくなってしまっても「俺たちは特別」と思いたがる人たちが多いのでしょう。

さて、それでは実際のAI関連の売上ではG6諸国の中でアメリカがいちばん伸びているのかというと、まったくそうではないのがおもしろいところです。アメリカはほとんど横ばいに近い小さな伸びでした。

いちばん伸びていたのは、研究開発投資ではほぼ横ばいだった日本です。なぜこういうことになるかというと、応用技術はその時々の流行でいろいろなものがもてはやされるけれども、結局大事なのは基礎だということではないでしょうか。

日本の皆さんはあまりご存じありませんが、欧米の初中等教育での理科系分野は完全に崩壊しています。教師は科学手品のようなことで生徒の興味を持続させるのが精いっぱいで体系的に基礎を教えるなどということは放棄しています。

おそらく日本で工業高専を出た人のほうが欧米で4年制大学の工学部を出た人より工学的な技術だけではなく、自然科学の基礎をきちんと学んでいると思います。だからAIのようなつまらない流行を真剣にカネをかけて研究しようとは思わないけれども、必要なものを造ってくれと言われれば造ってしまうわけです。

日本人は自国がダメだと言えば知的能力が高そうに見えると思っている人が多くて、その中でも日本の科学技術に関する悲観論を唱える人が異常にに多いような気がするので、ちょっとしつこいほど具体的なデータを出して、それがいかに間違った考え方かを説明させていただきました。

ここで、なぜこれだけ好条件がそろっているにもかかわらず、日本の勤労所得はじりじり下がりつづけ、生活水準も低迷しているのかに話を戻します。