税制上有利なため、アップルを始め多くのアメリカ生まれのハイテク大手企業が登記上の本社をアイルランドに置いています。そしてこれらの企業は、知的所有権使用料収入はアメリカにある開発部門で計上して、支払額のほうは登記上の本社で計上して、技術開発力が圧倒的に強いように見せかけているのです。

人口を問わない総件数では中国、人口当たりでは韓国が特許出願・取得件数の高さで頑張っていますが、知的所有権使用料収支ではどちらも赤字解消の兆しもなく、いかに商売にならない特許をたくさん取得しているかわかります。

次の2段組グラフは、知的所有権使用料収支を対GDP比率で見たものです。

2010年対2022年で使用料収入の対GDP比率が0.2%から1.3%へともっとも大きく伸びたのはドイツですが、一方知的所有権使用料支払額はGDPの0.4%台にとどまっています。これがドイツの知的所有権使用料の収支尻を大きな黒字にしている一因でしょう。

自国が取得した特許の売りこみには熱心だけれども、他国が取得した特許を使用することにはあまり熱心ではない、技術排外主義的傾向が読み取れます。おそらく技術の相互交流による新しい発展はあまりない国なのでしょう。

日本は2010年の約0.4%から2022年の約1.1%へと対GDP比率をかなり伸ばしただけではなく、他国で開発された特許への使用権料もGDPの0.6%分払っていて、研究開発陣の相互交流を歓迎する国だということがわかります。

いちばん衝撃的なのは、アメリカの知的所有権使用料収入の対GDP比率が2010年の0.6%から2022年の0.4%へと下がっていることです。2000~02年のハイテクバブル期、そして2007~09年の国際金融危機の時代に比べて、アメリカの技術革新力は下がっているのでしょう。

さらに日本の技術力の突出ぶりを示すのが、次の2段組グラフの上段でしょう。