ちなみに、アメリカは弁護士の「活躍の場」を広げるために極端な先願主義を取っています。その結果、とうてい実用化は無理というようなコンセプトだけをとりあえず特許として取得しておく事例が非常に多くなってしまいます。
あとから似たような分野で実用化に成功した製品に言いがかりをつけて和解金をせしめるための特許ですから、アメリカの特許出願・取得件数は大幅に割り引いて考えないと技術水準について大きな間違いを犯すことになります。
またこのグラフは上下とも2004年時点でそれぞれの国で手に入る最新年次のデータを比較したものですが、その頃までは韓国が非常に頑張って日本に追いつきそうな勢いを示していました。
なお、日進月歩の技術の世界で今から20年前の特許出願件数を出しても古すぎるとお思いの方が多いでしょう。ですが、特許は出願や取得よりその後の知的所有権使用料収支が大事で、それがはっきりわかってくるまでには特許取得から10~20年の時間を要するのです。
そして、次の2段組表には1995~2021年の知的所有権使用料収支が表示されています。
2000年までは赤字だった日本の知的所有権使用料収支尻は、ちょうど先ほどご覧いただいた2004年前後に黒字に転換し、その後2015年にピークは打ちましたが、その後も安定した水準を保っていて、2021年段階でベスト10ヵ国の3位です。
すぐ上にいるドイツが2位で日本の約2倍、376億ドルの黒字となっていますが、2020~21年の水準が2015年以前に比べて非常に高いので、一発非常に儲かる特許が出たということだと思います。
なお、2010年以降ほぼ一貫して600~800億ドル台の黒字を維持しているアメリカは、やっぱり技術力で突出しているように見えます。ところが、これが実は幻想なのです。
ワースト10ヵ国でトップに立っているアイルランドの知的所有権使用料赤字が2010年の180億ドルから2021年の1150億ドルまで急拡大したのは、もちろんアイルランドの地場産業による支払額ではありません。