世界の金融バランスを保つ「基軸通貨」の責務はすでにドルに移っていた。おかげでイギリス(そしてアイルランド)国内の制度改革として、この通貨制度改めが達成された。セーラの明晰さに頼らずとも、お釣りを間違えずに済むようになったのだ。
8月15日は終戦の日ではなくイギリス・ポンドに取って代わって国際基軸通貨の任を担ってきた、ドルの国アメリカの大統領が、この1971年、世界の金融バランスよりも国内財政の立て直しを優先すると宣言したのだから、まことに歴史の皮肉だった。いわゆるニクソン・ショック。発表がちょうど8月15日(ホワイトハウス時間)であったことから、日本への当てつけではないかとまで当時騒がれた。
以後、世界の金融体制は金ではなく、もっと曖昧模糊なもので回りだした。カリオストロ公国が偽札の大量生産を加速させていたのも、金本位制が瓦解した後も東/西側の対立はなおも続いていたことにすがっての、生き残り策だった… そんな空想も広がっていく。
そういえばサウジアラビアは、遊びに特化した都市を建設し、その一角に鳥山明の「ドラゴンボール」のテーマパークも設けるという。この新造都市は総面積360平方キロ(琵琶湖の半分!)、そこの50ヘクタール(東京ディズニーランド総面積にほぼ相当)を割くという。
数年前の「ルパン三世」でカリオストロ公国のその後がそれとなく描かれていた。1979年に国政が破綻した後は、テーマパーク観光地として保っているようだった。そういえば鳥山のアニメ遺作は、砂漠化した世界を舞台に泉探しの旅をする冒険物語だった。地球温暖化の下、脱石油が急務の今、2030年を見据えての、産油国の雄の生き残り策がどうなるか、8月15日を前にして気になる、猛暑のこの頃ではある。