ヨーロッパは、銀の鉱山がドイツとオーストリアにあったこともあって、もともと金貨より銀貨がよく流通していた。しかしアメリカ大陸より銀が持ち込まれるようになると、銀より金に重きが置かれるようになった。
とりわけイギリスは、アイザック・ニュートン(万有引力の法則で知られるあのニュートン!)が造幣局局長を務めていた頃、金貨と銀貨の交換比率について、実際の金と銀のそれと違うものを設定してしまったこともあって、銀貨は相対的に価値を下げ、金貨中心で回っていた。
そこに、いわゆる産業革命の時代が重なり、海運国イギリスは全世界に勢力圏と領土を広げていくなか、金を貨幣制度の基本に置く「金本位制」を19世紀にスタートさせた。ソヴリン金貨一枚で1ポンド、これがシリング銀貨20枚ぶんで、さらに同銀貨一枚でペンス銅貨12枚ぶん…
要するにポンドという貨幣単位は十進法で回っていても、実際に使われる貨幣は、二十進法と十二進法の両方で回っていたのだ。金・銀・銅の実際の流通比率に準じたものだというが、おかげで実に計算しにくい。
そこにさらに4ペンス銅貨とか6ペンス銅貨とかいろいろ入り乱れるのだから、これでお釣りを間違えない、セーラの地頭の良さには、おとなになった今だからこそ感嘆してしまう。
カリオストロ公国はいつから偽札を刷りだしたかアニメつながりでもうひとつ、貨幣が裏テーマとしてあるものを見てみよう。
「ルパン三世カリオストロの城」は、繰り返しテレビ放映されているので、ご記憶の向きも多いだろう。スイスともリヒテンシュタインともつかぬ風光明媚な国・カリオストロ公国の城では、偽札が大量生産されている。
想像を広げてみよう。あの城の城主(そしてあの姫様)の指輪は、1517年と刻まれている。ヨーロッパ史を多少知っている方なら、マルティン・ルターがローマ・カトリックと決別した、いわゆる宗教改革の年だとピンとくるだろう。