この微小なチリは赤色の波長と同程度の大きさのものが多いため、火星では赤色の光がより多く散乱されます。そのため、火星の昼間の空の色は赤みを帯びて見えます。

夕方になると、太陽光が火星の大気を長く通過することで、赤色の光はほとんど散乱されてしまいます。そのため、比較的散乱されにくい青色の光が目に届くようになり、火星の夕焼けが青色に見えるのです。

こうした理由で、火星では昼夜の空の色が地球と逆転しているのです。

先ほども少し触れましたが、火星の平均気温は-63℃で、地球の平均気温14℃と比べるととても寒冷な世界です。これは火星の大気が薄く温室効果が得られないということに加え、火星が地球よりも太陽から遠いため、太陽光から受け取るエネルギーが小さいからです。

それでも、わずかながら火星にも季節の変化があります。火星の自転軸は公転軌道に対して25.19°傾いています。これは地球の23.44°と非常に近いです。そのため、火星は地球のように春、夏、秋、冬の四季が生じます。

夏には、北極にある極冠が融けていく様子が地球からも観測できます。

火星に生命はいるか?

19世紀後半、イタリアのミラノ天文台長だったジョバンニ・スキャパレリは、火星の観測中に興味深い発見をしました。

火星表面には黒い線状の模様が広がっていることに気づいたのです。スキャパレリはこれらを「溝」と表現しましたが、後にこの「溝」という言葉が「運河」と拡大解釈されるようになりました。

この誤解から、火星には運河を造るほどの高度な文明を持った「火星人」が存在する可能性が広く議論されるようになりました。

アメリカのパージバル・ローウェルも、この運河の謎に魅了された人々の一人でした。

彼は莫大な財産を投じて天文台を作り、火星の観測に熱心に取り組みました。そして、1895年に著書「火星」を出版し、その中で「火星に広がる多くの溝は、極地から水を運ぶための運河である可能性があり、それらは高度な文明を持つ火星人によって建造されたものである」と述べました。さらに、火星の重力が地球よりも小さいことから、火星人の身長は地球人の3倍程度であると推測しました。