ローウェルは火星人の容姿には触れませんでしたが、この説から着想を得たイギリスのSF作家、H・G・ウェルズがSF小説「宇宙戦争」を発表しました。この物語は火星人が地球に侵略してくるという内容で、挿絵に描かれた火星人の姿はタコのような形態でした。これが後に火星人の代表的なイメージとして定着することになりました。

しかし、20世紀後半に入ると、実際に火星に探査機が送られるようになり、火星人の存在は否定されることとなりました。

火星探査機から送られてきた画像には、タコの姿をした火星人はおろか、生命の痕跡すら確認されませんでした。また、運河と考えられていたものは、単に火星の土の色が異なっているだけであり、水は流れていませんでした。

では火星には生命が存在しないのでしょうか?

火星に生命が存在するかどうか、まだ断定するには早いでしょう。運河はありませんでしたが、火星には水の流れた跡が見つかっていて、極冠には水の氷があります。水があるということは生命の存在に期待が持てます。

現在、火星にいる可能性がある生命体の候補としては、原始的な細菌のような生物が想定されています。下の写真に写っているオレンジ色の小球は、火星由来の隕石とされている隕石ALH84001の中で見つかった炭酸塩鉱物です。隕石に含まれるこれらの炭酸塩鉱物は、36 億年以上前に火星で形成されたと考えられています。その構造と化学的性質から、微生物による影響があった可能性が推測されています。

Orange-colored Carbonate Mineral Globules
Orange-colored Carbonate Mineral Globules / Credit:NASA/JSC/Stanford University

最近の火星探査では、火星にメタンが存在することが確認されています。火星でのメタンの寿命が数百年と比較的短いことと火星の大気循環が速いことから、メタンの供給源が現在も存在している可能性が高いと考えられます。