探査機の運動をコントロールするのにジェットエンジンを使った場合、大量の燃料が必要になります。現在では多くの探査機がスイングバイという方法を使って加速・減速や方向転換を行っています。スイングバイとは惑星の重力を利用して探査機の運動をコントロールする技術です。
ベピ・コロンボ ミッションでは水星周回軌道に入るまでに計9回もの惑星スイングバイを行います。これは史上最多記録です。
水星に水はある?
水星は「水の星」と書きますが、その名の通り水がある星なのでしょうか?
水星には大気がほとんどない
水星の見た目はクレータが多く、月に似ています。地球のような海は見当たらず、明らかに液体の水はなさそうです。
水星には大気がほとんどないので、対流によって熱の伝搬がなく表面温度の差が極端です。そのため前述したように太陽の光が直接当たる昼間は400℃以上になるのに対して、夜には-200℃まで冷え込みます。かなり厳しい環境です。
でも、氷はあるかもしれない
にもかかわらず、水星には水の氷があるのではないかと言われていました。
水星は公転面に対して自転軸がほぼ垂直になっているので、北極や南極のクレータのくぼみには、永久に太陽光が当たらないところがあると考えられるのです。これは永久影と呼ばれずっと-200℃の夜の世界です。だとするとそこに氷の水があってもおかしくありません。
実際に、探査機メッセンジャーによって、水星のクレータの永久影が確認されました。さらにその場所を詳しく調査したところ、H2Oの氷の存在を示す数々の証拠が得られたのです。具体的には、赤外レーザーの反射率が高い場所があり、その場所に水素が存在すること、常に-170℃以下になっていることなどから氷があることが分かりました。
それでは、その水はどこから来たのでしょうか?
1つの説として、彗星などの氷を含む天体が水星に衝突したときに水がもたらされたと考えることができます。また、水星に吹き付ける太陽風の水素原子と水星の岩石由来の酸素原子が反応して水ができたのかもしれないと考えられています。