例えば、地球の衛星である月は、地球にいつも同じ面を向けています。これは月の自転周期と地球の周りをまわる公転周期が一致しているからです。比で表すと1:1となります。このような現象は「軌道共鳴(平均運動共鳴)」と呼ばれています。

水星の自転と公転が共鳴する原因は太陽からの潮汐力のためと考えられます。

潮汐ロック
潮汐ロック / Credit:創造情報研究所

太陽の重力の強さが太陽に近い側と反対側で異なるため、水星は太陽方向に引き伸ばされます。

しかし、引き伸ばされた膨らみの部分(図の緑色部分)は水星の自転に引きずられて太陽方向からはわずかにずれます。このときに膨らみに働く重力(太陽からの引力)について考えてみましょう。

自転方向の成分に注目すると、太陽に近い側では自転と反対方向の力が働き、太陽から遠い側では自転と同じ方向の力が働きます。太陽に近い側の力が強いので結果として自転を妨げる作用が働きます。

このため、自転は次第に遅くなり、自転周期と公転周期の間には整数の比例関係が生じます。

昼と夜の温度差が大きい

太陽に一番近い惑星である水星は、太陽からの強烈な熱を受けて昼間は400℃にまで温度が上がります。これは、鉛が融けてしまう温度です。

一方、夜になると大気がほとんどないので熱が急速に宇宙空間に逃れ、-200℃という超低温の世界になります。

水星の1日の長さは176地球日であるため、400℃の灼熱状態が88日続いた後、-200℃の極寒状態が88日続くというサイクルが繰り返されています。

君は水星を見たことがあるか?

実は筆者は見たことがありません。地球から水星を見るのはとても難しいのです。ベテランのアマチュア天文学者(市民研究者)でも水星を見たことがない人は多いようです。

水星の観測が難しい理由

水星を見るのが難しい理由の1つは、水星が太陽に近すぎるからです。

地球軌道の内側を公転する惑星を内惑星、外側を回る惑星を外惑星と呼びます。外惑星は、太陽と反対方向の位置になることがあり、深夜の夜空に輝くことがあります。それに対して内惑星は太陽の近傍から大きく離れることはありません。

最大離角
最大離角 / credit:国立天文台暦計算室