アメリカの歴代政権もこの抑止政策を保ってきた。そのための軍事能力を保持してきた。「備えあれば、憂いなし」ともいえよう。トランプ政権にいたっては自国にとっての平和も、世界的な平和も「力による平和」と定義づける。実際の強大な軍事力の誇示によって潜在敵国の軍事行動を事前に抑えてしまうという趣旨である。

トランプ前政権の「国家防衛戦略」には以下の記述があった。

「戦争を防ぐための最も確実な方法はその戦争への準備を備え、なおかつ勝利する態勢を整えることだ」

きわめて明快、かつ単純である。戦争を仕かけられても必ずそれに勝つ態勢を保っていれば、そんな相手に戦争を仕かけてくる国はいなくなる、ということである。

現実の国際情勢では平和を保つ、つまり戦争を防ぐという政策はこれほどの実効力を伴うのである。日本の「8月の平和論」とは白と黒、まったく異なるのである。

古森 義久(Komori Yoshihisa) 1963年、慶應義塾大学卒業後、毎日新聞入社。1972年から南ベトナムのサイゴン特派員。1975年、サイゴン支局長。1976年、ワシントン特派員。1987年、毎日新聞を退社し、産経新聞に入社。ロンドン支局長、ワシントン支局長、中国総局長、ワシントン駐在編集特別委員兼論説委員などを歴任。現在、JFSS顧問。産経新聞ワシントン駐在客員特派員。麗澤大学特別教授。著書に『新型コロナウイルスが世界を滅ぼす』『米中激突と日本の針路』ほか多数。

編集部より:この記事は一般社団法人 日本戦略研究フォーラム 2024年8月7日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は 日本戦略研究フォーラム公式サイトをご覧ください。