物価上昇だけではない観光地化の弊害

 過剰な観光地化の影響は物価面だけではないという。例えば、リゾート施設の開発が、道路や上下水道等のインフラが整っていない山間部を切り開いて行われる場合、新たに水道整備やゴミの収集・処理といった行政サービスが必要となり、自治体の負担が増えることになるという。固定資産税で回収できるといっても開発が続けばその分負担も増え、万が一観光地として衰退したら、空き家問題など「負の遺産」を抱えかねないという問題も生じる。その他にも様々な悪影響があるという。

「外資が開発したリゾートや外国人オーナー所有の施設を地元の人が借りて事業を営むのは難しい。従業員も顧客も外国人がほとんどという状況になれば、観光シーズンになると外国人だらけの町ができてしまう。地域の一部が乗っ取られるという恐怖心(ツーリズモフォビア:観光恐怖症)につながってしまうかもしれません。

 さらには、商店街や町内会の活動が衰退するという問題もあります。観光施設のオーナーや従業員が外国人である場合、商店街組織や町内会には参加しないため、それらの活動が衰退してしまう可能性があります。例えば、街路灯は電気代を町内会費から負担していることも多く(行政が一部補助する場合もある)、会費収入が減少すると維持管理が難しくなってしまうかもしれません。過度な観光地化によって住民の生活環境が悪化することになれば、定住人口の流失という自治体にとって最も望ましくない事態を招きかねません」(同)