「やま」と「まち」の物価
物価上昇はニセコの住民にはどの程度影響しているのだろうか。東氏によると観光客が集中する場所と住民が生活する場所は違うという。
「現地の住民は、観光客の多いスキー場周辺を『やま』と呼び、中心市街地を『まち』と呼んでいます。観光客向けの高い価格が話題となるのは『やま』のほうであり、住民への影響を知りたければ『まち』の価格を調べる必要があります」(同)
調べてみると『まち』には「マックスバリュ」や「コープ」等のスーパーがあり、こうした店舗では外国人向けに高いお酒や嗜好品を置いているものの、一般的な食料品は高くない。観光客向けではないような普通の飲食店も数多くみられるほか、昨年12月には倶知安町に「すき家」が進出している。現時点では、観光客向けのお店ばかりで住民が買う場所がないという事態には陥っていないようだ。ただし不動産投資の面で東氏は警鐘を鳴らす。
「倶知安町では地価が上昇しています。一般論として、オーナーが住居や店舗として住民に貸すよりも民泊や外国人向けの施設の方が収益性が高い、あるいは高く買ってくれる外国人投資家に売却したほうが良いと判断した場合、街自体の様相が変わってしまう可能性があります。住民が以前より住居や店舗を借りにくくなっているような事態がすでに起きているかもしれません。円安で日本の不動産が安いと判断されている今、ニセコだけでなく、他の観光地の物件も海外からの投資対象として注目されはじめています」(同)
ニセコではリゾート開発が盛んでおり、スイスやカナダのリゾート地と比較して圧倒的に安い点も投資が進む理由の一つだ。現在の開発は「やま」がメインだが、「まち」にまで広がってしまうと住民への悪影響はさらに大きくなってしまうだろう。