時代とミスマッチ

 以上のデータは、番組と時代状況とのミスマッチを示している。番組内に登場する人々の奮闘ぶりは感動的だった。ところがそこだけを切り取り、時代状況を無視する作り方に違和感が残る。構造物としての東京スカイツリー建設は確かに偉業だ。ところが番組には、電波からIP網へ移行する時代への目くばせがない。小さな端末にカメラを搭載したのも素晴らしい。ところがSNSの時代へと移行する中、日本企業は次々と地盤沈下した。製造業からシステムやサービス設計が肝(きも)となる状況を番組は描かない。三陸鉄道の復旧も感動的だ。ただしローカル線は経済合理性の問題から、各地で次々と消えようとしている。こうした状況を無視した局所的な感動はどうなのか。

 メディア関係者や専門家のなかには、新シリーズへの批判がある。テーマがものづくりだけに絞られ、前シリーズと同じように感動を強調するための厚化粧演出になっているからだ。

「不屈」
「退路を断つ」
「存続の崖っぷち」

 令和の現代なのに、番組は男たちの浪花節オンパレード。しかし日本の製造業は、インターネットやSNSを前提とした海外のサービスに敗れ続け、日本経済はコンテンツやサービスなど新たな領域への展開が求められている。こんななかで強調される「妻との約束」や「亡き上司への誓い」など。読後感が情緒たっぷりの使い古された感動では、視聴者の思考停止を誘発し、より本質的な問題を覆い隠すという意味で時代をミスリードしないだろうか。

 若者・女性・時代を俯瞰(ふかん)する人々が違和感を抱いているとしたら、『新プロジェクトX』は現代と正しく向き合っているとはいえない。“失われた30年”からの脱出が視野に入っているのなら、グランドデザインを考えるような作りもぜひ考えるべきだ。

(文=Business Journal編集部、協力=鈴木祐司/次世代メディア研究所代表)

文・MOBY編集部/提供元・MOBY

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