■究極のサイコパスだったイスラエル・キース

 34歳のイスラエルはアラスカ州のアンカレッジに、長年交際しているガールフレンドと10歳になる娘とともに暮らしていた。軍人として働いた後に建設業を営み、仕事は順調で信頼されていた。腕もよく、昼ご飯もとらずに朝から夕方まで集中して仕事をこなす男だった。プロジェクトの途中に突然「用事ができたから1週間の休暇をとらせてくれ」と申し出ることがあったが、仕事が早い男だったので、誰も不審に思うことはなかった。

 FBIはイスラエルの自宅を家宅捜索し、PCでサマンサの誘拐事件について頻繁にチェックしていることを突き止めた。イスラエルはアラスカ州の拘置所に移送され、FBIは何を突き止めたかだけ伝え、イスラエルが口を開けるのを待った。

 長い沈黙の後、イスラエルは「サマンサか。もう死んでるよ」と語り出した。

「ガレージに監禁し、強姦した後に窒息死させた。彼女には何をするか、きちんと伝えておいたよ」「新聞と写真を撮ったときは、もう死んでずいぶん経っていた。糸で縫って目を開けさせてたんだ」「死体はバラバラにしてマタヌスカ湖に捨てた。ゴミ袋に分けて入れてね。チェーンソーで厚く張った氷を抜き取り、アイスフィッシングしていると見せかけて、そこから捨てた」と自供した。

 翌日、警察はマタヌスカ湖を捜索。サマンサの遺体を発見した。

 サマンサ誘拐強姦殺人を語るイスラエルを見て、FBI捜査員たちは背筋が寒くなった。落ち着いた声で淡々と話しているのだが、とても嬉しそうなのだ。サマンサを強姦、殺人したガレージは自宅ガレージであり、家族が住む家のすぐ側にあった。「近くに娘がいるのに、よくそんなことができたな」と言われるとイスラエルはニヤリと笑った。

 なお、アラスカの冬はとてつもなく寒いため、ガレージの中に放置されたサマンサの遺体はあまり腐敗しなかった。そのことを計算し、サマンサを殺した翌日、イスラエルは娘と共にカリビアン・バケーションに出かけている。冷酷な殺人鬼から優しい父親へと一瞬にして変わることができるということに捜査官たちはゾッとした。イスラエルは「私の本当の顔を知る者はいない。ここ14年間、私は2つの顔を完璧に分けて暮らしてきた」と得意げに語った。彼は究極のサイコパスだったのだ。

究極のサイコパス…いまだ殺人件数不明の連続殺人鬼イスラエル・キースの異常性
(画像=Gerd AltmannによるPixabayからの画像,『TOCANA』より 引用)