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現在一番多く朝倉山椒を育てている畑(はた)地域
地元では家に常備してあるほど親しまれている「ゆず山椒」
現在一番多く朝倉山椒を育てている畑(はた)地域
畑(はた)は山間の静かな地域ですが、養父市内の朝倉山椒の生産量の約40%はここで生み出されています。
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ここで生まれた朝倉山椒加工品の一例がこちらです。
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中でも真ん中の「朝倉山椒ジェノベーゼ」は大ヒット商品で、次の華々しい評価を受けています。
「ふるさと名品オブザイヤー」2017年最優秀賞受賞。
「ディスカバー農山漁村(ムラ)の宝」2016年優良事例に選定。
山椒というとちりめん山椒とか、山椒味噌とか、とかく和食のイメージですが、西洋風ソースに生かしたアイデアが素晴らしい。
業界のバイヤーが集まる見本市でこの商品を出展された時のこと。
ある会社のバイヤーが、朝倉山椒ジェノベーゼをクラッカーに乗せ試食で提供したところ、
「おお~っ!これは白ワインにぴったりじゃないですか~」と絶賛したそうです。
1981年に結成された畑特産物生産出荷組合では、朝倉山椒の品質と価値を高めるためにあることを行っています。
それはブランチングです。
ブランチングとは?
ブランチングは、野菜や果物などを短時間加熱した後に冷やすという調理法です。
野菜には、色や食感、香りなどを変化させる働きをもつ酵素が含まれており、加熱処理することによって酵素の働きを抑え、品質の低下(変色、変質)を防いだり殺菌したりすることが目的です。
よくうなぎの蒲焼にかける粉山椒は茶色いことが多いですが、朝倉山椒はブランチングにより鮮やかな緑色を保っています。
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こんな鮮やかな山椒の粉を見たことありません。料理もますます美味しく感じられそうですね。
ブランチング作業の様子を見学させてもらいました。
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朝倉山椒はヨーロッパの人たちから「グリーンダイヤモンド」と言われているそうです。食べるものは見た目の色も大事ですよね。
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収穫した朝倉山椒。まずゴミなど不純物をざっと取り除きます。
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その後、しっかり水洗いをします。
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それからこの大鍋で茹でます。どのくらいの温度と時間で茹でるのかは企業秘密だそうです。
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一定時間茹でた朝倉山椒を再度水洗いし急速冷凍します。これでブランチングは終了です。
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朝倉山椒及び加工品作りは、日々試行錯誤の繰り返しだそうです。
現在の課題は人手不足。
全国的に地方の高齢化、過疎化が問題となっていますが、養父市も同様です。
朝倉山椒をもっと多く生産したいのだけれどもその担い手がいない。特に収穫時期の人手が圧倒的に足りない。
朝倉山椒の収穫期は5月下旬のたった1~2週間ほどです。
朝倉山椒を作っている農家の人たちの多くは他の作物も作っているので、ちょうど田植えの時期と重なるため、人手が追いつかないのです。
朝倉山椒を絶やさないために、例えば「朝倉山椒収穫体験」として募集したり、企業とタイアップして応援を頼むなどの試みがなされているそうです。
地元では家に常備してあるほど親しまれている「ゆず山椒」
朝倉山椒の加工商品の代表選手ともいえるのがこちら。
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味噌汁、刺身、麺類、鍋、肉、旬の野菜などあらゆる料理の薬味として力を発揮する万能調味料です。
このゆず山椒は、日の出ホールディングス株式会社食品カンパニーの但馬醸造所で作られています。
但馬醸造所は、養父市の大屋町にあった小学校の廃校跡を利用して今から16年前に誕生しました。
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今でも教室などはほぼそのまま活用されています。
但馬醸造所のある大屋町は養父市の中でも山深い場所です。
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私が訪れた時も、うぐいす達の合唱が山里に響き渡っていました。
「なぜこのような場所に但馬醸造所を作られたのですか?」と尋ねたところ、大友工場長はこう答えられました。
「オーナーのひとことで即決でした。オーナーがこの大屋町を下見に来た時、近所の小学生の女の子が「こんにちは」と挨拶したのですが、その印象と町の雰囲気がとてもよくて『ここに醸造所を作ろう!』と決めたのです。」
日の出ホールディングス株式会社食品カンパニーはお酢を作っている会社です。
美味しいお酢を作るためには美味しい空気、きれいな水(軟水)が酢づくりに向いていることも理由のひとつだそうです。
今でもお酢が但馬醸造所の主力商品です。
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お酢を作る但馬醸造所がなぜ「ゆず山椒」を作ったのか?
養父市ではゆずが採れ、ポン酢の材料として利用していましたが、果汁を絞った後のゆずの皮は廃棄されていました。
「もったいないのでゆずの皮の何か良い使い道はないだろうか?」と地元では考えていました。
但馬醸造所の大友所長は以前大分で働いていたことがあり、頭に浮かんだのが「ゆず胡椒」でした。
大分の家庭に必ずといっていいほど常備されている万能調味料「ゆず胡椒」。
これに養父特産の山椒を入れたら良いのでは?と閃いたのです。
ゆず山椒の原料は、ゆずと山椒と塩と酢。余計なものは入っていません。山椒の香りとスパイスが塩分過多を抑えて酸味の効いた程よい調味料となるので健康にも良い。
これが大ヒット!
今では日本のみならず、外国、特にフランスから「欲しい欲しい」と求められる商品となりました。
添加物を極力少なくし、素材を生かす。
その土地で採れる作物を無駄なく生かすだけでなく、価値を高めて社会に貢献する。
素晴らしい取り組みですね。日の出ホールディングスは、常に新しいアイデア、常識に縛れない商品作りに邁進されているようです。
その一例として、これまで山椒は仕入れていましたが、最近では仕入れを安定させるために但馬醸造所自らが朝倉山椒を作るようになりました。
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山椒収穫の時期の頃に限定で作られる朝倉山椒が増し増し(50%使用)のプレミアム商品。(緑色がさらに濃くなります)