結論ありきの調査

 日本テレビの調査チームは報告書において次のように総括している。

「放送されたドラマは本件原作者の意図をすべて取り入れたものとなったと日本テレビも小学館も認識している」

「本件原作者が本件ドラマの内容が自己の意向にそぐわないものだとの理由で不満を抱えていたという事実はなかったとみられる」

 キー局関係者はいう。

「誰が読んでもこの総括は無理があると感じるだろうが、第三者委員会などではなく、あくまで内部調査なので、このような結果になるのは当然。『最終的に放送された内容は原作者の意向に沿ったもの』という点を強調するための結論ありきの調査」

 別のキー局関係者はいう。

「9・10話がオリジナルドラマでなければ、表面化するほどの問題には発展していなかっただろうが、制作が決まった最初の段階で日本テレビ、小学館双方ともに、重要な点を曖昧にしたまま、とにかくドラマ化ありきで企画スタートを優先させてしまった感がある。ドラマ制作は、いったんスタートしてしまえば、いろいろと問題が起こるものの“なんとかなる”ものなので理解はできるし、これだけ揉めたにもかかわらず最終話の放送にまでこぎつけたというのは事実であり、プロデューサーとしての職務は果たしているとはいえる。だが、報告書の経緯を読む限り、小学館サイドや脚本家サイドとのやりとり面でプロデューサーのハンドリングや詰めの甘さを感じのは否めない」

 テレビドラマ制作関係者はいう。

「この業界では契約書が締結されないというのは普通のことであり、仮に契約書を締結していたとしても、どのレベルまでの改変を許容するのかどうかをあらかじめ契約書で明文化するのは困難なので、契約書を締結したからといって同様の問題の再発を防げるわけでなない。『必ず漫画に忠実に』『漫画に忠実でない場合は本件原作者がしっかりと加筆修正する』という条件について、日テレは提示された認識がないと言い、小学館は提示していたと言っているが、どこまで忠実にするのかを事前に定めることはできないし、脚本の内容がFIXしなければ最終的には著作権上の都合で原作者の意向に従う以外に方法はない。そもそも書面を取り交わしていなかったということなので“言った言わない”の次元の話。また、制作期間が6カ月ほどというのも一般的なので、制作期間的に問題があったわけでもない。

 報告書を読んだ感想としては、ここまで原作者が脚本の内容に指摘を入れてくるというのはレアなケースとはいえるだろう。小学館は途中で、脚本家を原作者の意向をそのまま取り入れてくれるような若手に交代する案も提示していたということだが、確かに最初から脚本家がそのようなタイプであれば、これほど揉めなかっただろう。原作に厳格に忠実であることを求める原作者と実績豊富なベテランの脚本家という組み合わせとなる以上、今回のような問題は防ぎようがない」(6月1日付当サイト記事より)