「脚本家は今すぐ替えていただきたい」

 同ドラマの制作が始まったのは放送開始の約6カ月前の昨年3月末。日本テレビは作成したプロットや脚本を小学館に送り、芦原さんからの指摘を受けて修正するという作業(ラリー)を繰り返すかたちで脚本づくりを進めた。日本テレビと原作サイドの間のボタンの掛け違えの原因は、制作開始当初から存在していた。9・10話は原作にはないオリジナルドラマになる予定であったが、日本テレビ側は「小学館からは、未完
部分はドラマオリジナルのエンドでよい、という話であった」という認識であり、小学館側は「未完部分は原作に影響を与えないよう、原作者が提案するものをベースにしたドラマオリジナルエンドで良いという趣旨で言った」という認識であった。

 この両者間の認識の齟齬について報告書は、

「『漫画が完結していない以上、ドラマなりの結末を設定しなければならないドラマオリジナルの終盤も、まだまだ未完の漫画のこれからに影響を及ぼさない様<原作者があらすじからセリフまで>用意する』という条件は小学館からは口頭あるいは文書で提示されていなかった」

と結論づけている。小学館側は

「条件として文書で明示しているわけではないが、漫画を原作としてドラマ化する以上、『原作漫画とドラマは全く別物なので、自由に好き勝手にやってください』旨言われない限り、原作漫画に忠実にドラマ化することは当然」

という認識を示している。

 この認識の齟齬が問題を生むことになる。日本テレビと小学館の間で9・10話のプロットと脚本についてラリーが重ねられたが、難航した末に小学館は芦原さんが修正したプロット・脚本について「一言一句絶対変えないで」ほしいと要求。芦原さんは小学館を通じて日本テレビに以下を要求するに至った。

「・脚本家は今すぐ替えていただきたい。
・最初にきちんと、終盤オリジナル部分は本件原作者があらすじからセリフまで全て書くと、約束した上で、今回この 10 月クールのドラマ化を許諾した。
・この約束が守られないなら、Huluも配信もDVD化も海外版も全て拒絶する。
・本件脚本家のオリジナルが入るなら永遠に OK を出さない。度重なるアレンジで何時間も修正に費やしてきて限界はとっくの昔に超えていた。
・B 氏が間に入ったというのを信頼して今回が最後と思っていたが、また同じだったので、さすがにもう無理である」

 そして日本テレビは芦谷さんが執筆した脚本を同ドラマの脚本を担当する相沢友子さんに見せ、「制作サイドで作成した脚本は認められないこと、これを飲まないと放送できないことを伝えたところ、本件脚本家はいきなりの話であって驚愕した」(報告書より)。相沢さんは9・10話の脚本から降りる旨を日本テレビに伝え、放送内で自身の名前をクレジット表記しなくていいと伝えたが、その後、相沢さんはクレジット表記をしてほしいと要請。日テレは小学館に相沢さんの名前を「脚本協力」あるいは「監修」などというかたちで入れてほしいとの要望したものの、小学館はこれを拒否した。この過程のなかで相沢さんは、弁護士から内容証明のかたちで二次利用において「脚本協力」として自身の名前をクレジットに入れるよう要望していた。