チャート:労働参加率は横ばい、就業率は小幅低下
(出所:Street Insights)
経済的要因でパートタイム労働を余儀なくされている者などを含む不完全就業率は過去2カ月連続で7.3%を経て、今回は7.4%へ上昇し2021年11月以来の高水準。家計調査でパートタイムが減少するなかで、米景気減速を示唆するように高水準となった。
チャート:不完全就業率、2021年11月以来の水準へ上昇
(出所:Street Insights)
失業者とは、①失職中、②過去4週間に職探しを行なった、③現在、勤務が可能――の3条件を満たす必要がある。失業期間の中央値は9.5週から8.7週へ短縮した。一方で、27週以上にわたる失業者の割合も19.6%と前月の19.5%から上昇した。
チャート:長期失業者が全失業者に占める割合
(出所:Street Insights)
〇病気が理由で働けないとする人々
「病気が理由で働けない」とする人々は今回、前月比3.7万人減と3カ月連続で減少し107.1万人。引き続き、コロナ前平均の2015‐19年の平均値を上回ったが、冬が終わりを告げるタイミングでインフルエンザやコロナが再拡大が落ち着きつつあるようだ。
チャート:「病気が理由で働けない」とする人々は2015-19年の平均値を上回る水準が続く
(出所:Street Insights)
〇家計調査の就労者内訳
足元、事業所調査(給与台帳ベース、NFPや平均時給、週当たり労働時間など、CES)と家計調査(聞き取り調査ベース、失業率や労働参加率など、CPS)の就業者数の数字を比較すると、今回はNFPが17.5万人増に対し、家計調査の就業者数は2.5万人増と2カ月連続でNFPと足並みをそろえ増加した。
チャート:NFPと家計調査の就業者数の結果、2カ月連続でそろって増加
(出所:Street Insights)
家計調査の就業者数を雇用形態別でみると、フルタイムが前月比94.9万人増と大幅に5カ月ぶりに増加した。伸びは2023年3月以来の強さとなる。一方で、パートタイムは逆に同91.4万人減と大幅に6カ月ぶりに減少。コロナ禍で経済活動が停止した2020年4月以来の大きさとなる。複数の職を持つ者は同9.3万人減と減少に反転。今回、パートタイムの一部がフルタイムに転じた可能性を示唆する半面、パートタイムと複数の職を持つ労働者の減少は、企業が需要低下に陥る筒ある兆しと考えられ、5月の結果を待ちたい。
チャート:フルタイムは5カ月ぶりに増加し、パートタイムは6カ月ぶりに減少
(出所:Street Insights)
チャート:複数の職を持つ者は前月比で減少も、高止まり
(出所:Street Insights)
米労働市場の堅調ぶりの証左として低水準で推移する米新規失業保険申請件数が挙げられるが、過去と比べ増加しない一因として、①給付額が米国内のインフレを加味していない、②パートタイムで働いた方が時給がよい(ex:カリフォルニア州でファストフード店の時給が20ドルへ引き上げ)--が挙げられる。実際、2022年以降の米新規失業保険申請件数・4週平均の月末値とパートタイムの就業者を比較すると、両者は概ね反比例の関係にあり、失業者は失業保険よりパートタイム勤務を選択しているようだ。ただ、米景気減速でパートタイムへの流れが流れが止まれば、米新規失業保険申請件数が増加する余地がある。
チャート:米新規失業保険申請件数・4週平均とパートタイム就業者数は、概ね反比例の関係
(出所:Street Insights)
NFPと家計調査の就業者数の動向の、どちらを信用すべきか悩むところだろう。米労働統計局によれば、NFPを含むCES(他に平均時給、週当たり労働時間が含まれる)は、他指標とコロナ禍を経て同様に回答率が低下をたどる。直近のデータをみると、CESは2023年9月に41.8%、雇用動態調査(JOLTS、求人件数などを含む)は32.4%と、それぞれ低水準を保った。失業率や労働参加率などを管轄するCPSは対面と電話での聞き取り調査となるなか、2023年10月に71.3%と、他と比較して高い。こうした違いを踏まえれば、CESの結果よりCPSの方が信頼性が高いように見える、しかし、CESの調査対象は12万2,000以上の会社や政府機関である一方で、CPSは6万世帯に過ぎない。従って、通常は雇用の伸びについてはNFPを扱うCESを重視する傾向が強い。
チャート:雇用関連の調査回答率は低迷
(出所:Street Insights)