〇平均時給
平均時給は前月比0.2%上昇の34.75ド ル(約5,280円)と、市場予想と前月の0.3%を下回った。ただし、2021年2月以降の上昇トレンドを維持した。前年同月比は3.9%、市場予想の4.0%並びに前月の4.1%を下回り、2021年6月以来の4%割れを迎えた。生産労働者・非管理職の前年同月比も4.0%と、前月の4.2%を下回り、2021年5月以来の低い伸びだった。
チャート:平均時給、生産部門・非管理職と合わせ前年比で2021年6月以来の低い伸び
(出所:Street Insights)
〇週当たり労働時間
週当たりの平均労働時間は34.3時間と、市場予想と前月の34.4時間を下回った。2020年3月以来の低水準だった1月の34.2時間を辛うじて上回ったが、2006年以来の最長を記録した2021年1月の35時間を下回り続けたままだ。財部門(製造業、鉱業、建設)が39.7時間と前月の39.9時間から短縮、1月は34.5時間と2020年6月以来の低水準を上回りつつ、引き続きコロナ禍で最長となった2022年2月の40.3時間以下が続く。米4月ISM製造業景況指数の50割れと、整合的だ。全体の労働者の約7割を占める民間サービスは3カ月連続で30.3時間で、2006年以降で最長を記録した2021年5月の33.9時間以下が続く。
チャート:週当たり平均労働時間は
(出所:Street Insights)
〇総労働投入時間、民間の総賃金
総労働投入時間(民間雇用者数×週平均労働時間)は就労者数の伸びが前月から大幅に減速したほか労働時間が前月から短縮したため、前月比で0.2%減と前月の0.2%増を下回り、3カ月連続ぶりに減少した。平均時給が前月を下回る伸びで、労働所得(総労働投入時間×時間当たり賃金)は前月比横ばいと増加トレンドを5カ月連続で止めた。
民間部門の総賃金(雇用者数×週平均労働時間×時給)は前月比で横ばいとなり、2021年3月からの増加トレンドが一服した。前年同月比は5.6%増と、前月の5.9%増から鈍化。ただ、3カ月平均は前月の5.3%→5.6%増と鈍化トレンドから反転した。
チャート:民間部門の総賃金は
(出所:Street Insights)
〇失業率、労働参加率、就業率、不完全就業率、長期失業者
失業率は3.9%と市場予想と前月の3.8%を上回り、2022年1月以来の高水準へ戻した。労働参加率は前月通り、62.7%。一方で、失業者数が前月比6.3万人増、就業者数が同2.5万人増と、それぞれ小幅だったが失業者の伸びが就業者を上回り、失業率の上昇につながった。
自発的離職者数は78.5万人と減少に反転、2019年平均を下回った。自発的離職者数に占める失業者の割合は前月の12.7%から低下、ただし、これは解雇者が増加するなど、他が増えたためだ。
チャート:自発的離職者数は
(出所:Street Insights)
自発的離職者数が減少した一方で、解雇者数(一時的な解雇ではなく再編やM&Aなど会社都合での解雇者、派遣など契約が終了した労働者)は、前月比10.7万人増の237万人と増加に反転、2021年11月以来の高水準近くへ切り返した。ただし、水準自体は増加傾向を保つ。解雇者数の割合は前月の35.0%→36.3%へ上昇し、失業者のシェアで1位を維持した。さらに、解雇者数が労働人口に占める割合は1.05%と、2021年12月以来の高水準をつけた。その他、一時解雇者は前月の12.1%→13.3%と4カ月ぶりの水準へ戻した。解雇者数や一時解雇者数の増加の陰で、再参入者は前月の29.7%→29.5%、新規参入者は前月の10.5%→8.8%へ低下した。
チャート:失業者に占める解雇者
(出所:Street Insights)
チャート:解雇者は
(出所:Street Insights)
チャート:労働人口に占める解雇者比率は2021年12月以来の水準へ上昇、2019年の水準超え
(出所:Street Insights)
解雇者数の増加などが失業者数を押し上げるなか、サーム・ルール(失業率の直近3ヵ月移動平均と過去1年間での最低水準の差が0.5pt以上なら、1年以内に景気後退入りするとの説)を確認すると、4月は0.37ポイントと前月の0.3ポイントを超え、コロナ禍での景気回復局面で最高を記録した。景気後退入りのサインとなる0.5%乗せに近づいた格好だ。
チャート:サーム・ルール(直近3カ月の移動平均と過去1年間の最低水準の差)、コロナ禍後の回復期で最高に
(出所:Street Insights)
労働参加率は前述したように、2カ月連続で62.7%。20年2月(63.4%)以来の高水準を回復した2023年11月の62.8%を下回った。
就業率は60.2%と前月の60.3%を下回った。2020年2月(61.1%)以下が続く。