米4月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は、市場予想を下回りました。さらに、労働参加率が横ばいだったにもかかわらず、失業率は上昇。平均時給は市場予想以下となり、賃上げ圧力の後退を確認。

パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が5月1日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、3月FOMCに続き「予想外に労働市場が弱まるならば、政策対応(利下げ)の用意がある」と発言したように、労働市場は高金利に押し下げられつつあるようです。

予想より弱い米4月雇用統計に加え、米4月ISM非製造業景況指数が49.4と2022年12月以来となる分岐点の50を割り込んだ結果を受け、FF先物市場で9月の利下げ織り込み度は47.5%と、前日の45.5%から小幅上昇しました。年内利下げ確率は、再び2回が切り返しつつあります。ただ、米4月ISM非製造業景況指数は仕入れ価格が約1年ぶりに60を超えたため、利下げ期待の高まりは小幅にとどまっているようです。

画像:FF先物市場の反応(NY時間13時時点)

fedw24m (出所:Fedwatch)

結果を受け、ゴールドマン・サックスのチーフ・エコノミスト、ヤン・ハチウス氏は7月利下げの予想を維持。一方で、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙のニック・ティミラオス記者は影響は限定的と指摘、6月FOMC前にもう1回、米雇用統計を控えるほか、Fedにとって今回の弱含みは予想の範囲内とX(旧ツイッター)に投稿していました。

チャート:米4月ISM非製造業景況指数は約2年半ぶりに50割れ、仕入れ価格指数は3カ月ぶりに60乗せ

ism24apr2 (出所:Street Insights)

ドル円は4月29日、5月1日の実弾介入(日銀当座預金残高見通しベース)の影響もあって、米4月雇用統計の結果を受けて一時151.86円まで急落。米4月消費者物価指数(CPI)後の上げ幅を打ち消しました。しかし、米4月ISM非製造業景況指数の仕入れ価格が60乗せを迎えたこともあり、一時153円を回復するなど、値が荒い展開となっています。その他、利下げ期待バックオンでゴルディロックス経済万歳と読み取り、米株高・米債高(利回りは低下)を迎えました。

日足チャート:ドル円は米4月雇用統計直後に152円割れも、その後は下げ幅を縮小

USDJPY_2024-05-04_02-13-38 (出所:TradingView)

今回の雇用統計のポイントは、以下の通り。NFPの減速や失業率の上昇を始め、弱い材料が目立ちます。

(労働市場にポジティブ)

・家計調査の就業者数、2カ月連続で増加 ・フルタイムの就業者は5カ月ぶりに増加

(労働市場にネガティブ/ニュートラル)

・NFPが市場予想や前月を下回り、6カ月ぶりの低い伸び
・過去2カ月分は2.2万人の下方修正
・平均時給の伸び、前月比と前年同月比ともに市場予想以下(インフレ抑制の観点ではポジティブ、購買力の観点でネガティブ)
・週当たり労働時間、2020年4月以来の低水準近くへ戻す
・民間部門の総賃金(雇用者数×週平均労働時間×時給)、前月比横ばい、前年同月比は伸び鈍化
・労働参加率は前月と変わらず
・就業率、4カ月ぶりの水準へ改善した前月から低下
・不完全就業率は2021年11月以来の高水準
・失業者のうち自発的離職者が減少、解雇者数が増加し企業の雇用に対する慎重姿勢を示唆
・パートタイムの就業者数は6カ月ぶりに減少、複数の職を持つ者も減少

筆者としては、①NFPの減速、②平均時給の鈍化トレンド維持、③民間総賃金の伸び鈍化、④週当たり労働時間の短縮、⑤パートタイムが減少しているものの不完全就業率が上昇ーーなどを受け、米労働市場の調整が本格化した兆しが現れたと受け止めています。