■進まぬ捜査、怯えるハリウッドは大混乱!

 シャロンが殺害されたことでハリウッドのセレブたちは戦々恐々としていた。フランク・シナトラはすぐさまロサンゼルスから移動し、トニー・ベネットはセキュリティのしっかりしたホテルに移り、スティーブ・マックイーンは自己防衛のために銃を持ち歩くようになった。ビバリーヒルズの銃販売店は2日間で200丁もの銃を売り上げた。シャロン・テートとポランスキーの家からマリファナと麻薬が発見されたため、薬物がらみの事件かもしれないという噂が流れると、ビバリーヒルズでは薬物を所持している者たちが一斉にトイレに流し捨て、下水が詰まるというハプニングも発生した。

 警察は、ラビアンカ夫妻殺人事件をシャロン・テート事件を真似したものだろうと推測し、関連性のない全く別々の事件として捜査を進めていた。シャロンの方は麻薬がらみ、一方のレノはギャンブルの借金をめぐる事件だろうと睨んでいたからだ。当然、捜査は難航した。

 さらに、警察の失態も目立った。犯人の脱ぎ捨てた、血がべっとりとついた服を発見したのは事件を追っていたテレビクルー。犯行に使われた拳銃を発見したのは少年で、その父親の通報でやってきた警官は、証拠品をベタベタ触りながら署に持ち帰ることとなった。市民は「ちゃんと仕事をしろ!」と大激怒した。

 また、ファミリーが最初に殺したゲイリーの事件は、ロサンゼルス市警の管轄外であるマリブで起きた事件だったため、共通点があったにも関わらず無視された。ゲイリー殺人事件の捜査をしていたマリブの刑事たちがロサンゼルス市警に赴き、「同一人物による犯行だと思う。合同捜査をすべきだ」と訴えても、「いや、こちらのは麻薬絡みの事件だから」と取り合わなかった。

 最初の事件から1週間後の8月16日、チャールズたちは自動車盗難容疑で逮捕されている。しかし、あの恐ろしい殺人事件の加害者と疑われることもなく、証拠不十分としてすぐに釈放された。立て続けに人殺しをしたファミリーたちはぴりぴりしていたが、チャールズは「警察に捕まるわけがない」と自信満々だった。

 とはいえ、チャールズは警戒を解かず、警察からできるだけ離れた場所に移動すべきだと決心。再びカリフォルニア州シエラネバダ山脈東部にあるデスヴァレーに移った。そこでメンバーたちに「今回の殺人は、黒人との人種戦争を勃発するきっかけを作った」と言い放ち、メンバーたちに「いつでも戦える準備をしろ」と射撃などの特訓をさせた。

チャールズ・マンソン完全解説! 史上最凶のカルト連続殺人鬼の“身の毛がよだつ生涯”とは?
(画像=マンソン・ファミリー。画像は「Bizarrepedia」より引用,『TOCANA』より 引用)