屋号を付けるメリット

屋号は商号と異なり、登録する義務も、登録しなかったことによる罰則もありません。屋号がなかなか決まらず、登録を後回しにしたり、登録自体をしなかったりする人もいるでしょう。

しかし、屋号があると事業を有利に進めやすくなります。屋号を付けるメリットを4つ紹介するので、これらの効果が得やすそうな屋号を考えてみましょう。

事業内容を伝えやすくなる

屋号を付ける1つ目のメリットは「事業内容を伝えやすくなる」ことです。たとえば飲食店を運営しているなら「〇〇フード」「〇〇本舗」のような屋号を付けると、飲食系・店舗系の事業だと伝えやすくなります。

屋号で銀行口座を作れる

屋号を付ける2つ目のメリットは「屋号で銀行口座を作れる」ことです。屋号を登録すれば、その屋号の付いた銀行口座を開設できます。プライベートと事業で口座を分けることで、お金を管理しやすくなるでしょう。

ネットショップやオンラインサービスなど、不特定多数のお客さまから振込・振替がある事業では、屋号付きの銀行口座を作るメリットはより大きいです。振込先が個人名の口座ではお客さまが不安を感じてしまうかもしれません。

公私の境目が明確になる

屋号を付ける3つ目のメリットは「公私の境目が明確になる」ことです。先述のとおり、屋号付きの口座を作りプライベートの口座と分けることでお金を管理しやすくなります。運転資金と生活資金をきっちり分けることは、事業を安定させるためにも、家族の理解を得るためにも大切です。

請求書や領収書などの書類の整理もしやすくなります。経費に計上する支払いの請求書・領収書の宛名を屋号に統一すれば、どの書類が仕事関係なのかが一目でわかるでしょう。

モチベーションが上がる

屋号を付ける4つ目のメリットは「モチベーションが上がる」ことです。事業用の屋号を登録し、その屋号を使って活動することで、開業した実感がわくでしょう。屋号の入った名刺を見たり、屋号を名乗ったりするたびに、「自分はこのビジネスのオーナーなんだ」と感じてモチベーションが上がるかもしれません。

屋号を付ける前に確認・注意しておきたいこと

屋号は変更することもできますが、手間がかかるうえ、何度も屋号を変えていては取引先からの信用を損なうかもしれません。屋号を付ける前に確認・注意しておきたい5つのことを紹介するので、これらを念頭に置いて屋号を考えましょう。

屋号は付けなくてもいい

屋号を登録すれば事業を有利に進められることもありますが、付けなかったからといって特別不利になるというほどではありません。

実店舗やネットショップ、オンラインサービスなどの業種なら屋号を付けた方がいいですが、ライターやデザイナーのようなフリーランスなら付けなくても困ることはあまりないでしょう。

屋号は付けなくても構いません。後から登録することもできます。いい屋号がなかなか思い浮かばないなら、ひとまず屋号なしで開業するのもいいでしょう。

屋号の変更は確定申告時にできる

開業時に登録した屋号を変更したり、屋号なしで活動していた人が新たに屋号を登録したりする場合、確定申告時に手続きをします。手続きといっても、確定申告書の屋号欄に新しい屋号を記入するだけです。

ただし、簡単だからといって何度も屋号を変更するのはおすすめできません。屋号をコロコロ変えていては、取引先を不安にさせる可能性もあります。

屋号を変えたり新規登録したりすると手間がかかる

屋号を変えたり新規登録したりすると、名刺やWebサイト、SNSのプロフィールなども新しい屋号に書き換えなければなりません。

名刺印刷には費用がかかります。Webサイトのページが多かったり複数のSNSを運用したりしている場合、そのすべてを書き換えるのは大変です。見逃しや変更漏れも起こるかもしれません。

屋号はできるだけ早めに登録すること、後から変えることにならないようよく考えて決めることが大切です。

複数事業を運営している場合はイメージが偏らない屋号にする

複数事業を運営している場合、どれかひとつの事業にイメージが偏らないよう屋号を決めましょう。

たとえばラーメン屋と丼物屋を運営しているのに、屋号が「〇〇ラーメン」だったらどうでしょうか。フリーのエンジニアが経験を活かしてプログラミング関係の記事を書くライター業をはじめた場合、屋号が「〇〇開発」では、システム開発にイメージが偏ってしまいます。

事業拡大により屋号と事業のイメージが合わなくなってしまったら、多少の手間をかけてでも屋号を変えた方がいいでしょう。

屋号はそのまま商号にできる

個人事業主が法人登記する場合(いわゆる法人成り)、屋号をそのまま商号にすることもできます。ただ、屋号には記号を使うこともできますが、商号に記号は使えません。法人化を目指しているなら、商号としても使える屋号を考えましょう。