効率化に走り、「遊び」がなくなっている

 最後に近年のサイゼリヤの方針について、料理人としての稲田氏の意見を聞いた。サイゼリヤは従来、(1)の客層向けにインフラ的な役割を全うしつつも、(2)向けにチェーンらしからぬ「尖った」イタリアンメニューを紹介するという二面性が魅力だったと稲田氏は語る。しかし近年では効率化に走っており、(2)向けの商品が減少し、ありきたりな商品を提供している傾向がみられる。経営判断としては正しいが、尖ったメニューを提供する余力や「遊び」がなくなっている。値上げをせず、効率重視に偏重するサイゼリヤの施策は日本の飲食文化を長い目で見たときに懸念するところがあると稲田氏は言う。

 以上、サイゼリヤが値上げに踏み切らない理由を紐解いてみた。海外事業が国内事業の不調を補っており、国内では客足が遠のいてしまうことへの懸念から値上げをせずに、メニューの工夫や粉チーズの有料化などでなんとかコストを回収しようとしているようだ。効率化は企業判断としては正しいが、「遊び」がなくなってしまうとイタリアンにおける先導役としての役割を失うことだろう。長期的には飽きられてしまう危険性もある。

(文=永田理瑠/ライター、協力=稲田俊輔/「エリックサウス」総料理長)

●永田理瑠(ながた さとる)/ライター
経済、社会、街歩きの記事を執筆するライター。資料調査や専門家への取材に基づいた記事、街歩き系の記事を執筆する。趣味は散歩・カメラ。

提供元・Business Journal

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