なぜサイゼリヤだけが値上げしないのか?

 コロナ禍ではウクライナ侵攻の影響も相まって原材料費やエネルギー価格の高騰が続き、この間、飲食チェーン各社は段階的に100円、200円と値上げに踏み切った。しかしサイゼリヤは20年7月に国内店で価格表記を○99円単位から50円単位にする「1円値上げ」を実施したものの、他の飲食チェーンが実施したような大幅な値上げを行っていない。7月12日に発表された23年8期第3四半期決算においてもサイゼリヤの社長は値上げしない旨を主張している。国内事業が不振であるにもかかわらず、なぜサイゼリヤだけが値上げをしないのだろうか。

 稲田氏によると、サイゼリヤの売りはやはり低価格な点にあるという。たしかに国内では消費者が飲食店の値上げを渋々容認するようになったとはいえ、低価格を売りにしているのであれば、サイゼリヤの価格弾力性は飲食業よりも小売業のそれに近いのではないかと稲田氏は推測する。価格弾性力が大きければ、わずかな値上げでも大きく需要は減少してしまう。実際、小売業においては値上げに伴い販売数が減っている傾向が見られているため、仮にサイゼリヤが大幅な値上げをすると客足が遠のいてしまう可能性がある。