学費ローン未納=延滞扱いの再開が意味すること
さて、今回の妥協で学費ローン未納を延滞扱いしない特例は、6月末をもって打ち切ることが確定しました。ただ、60日間の周知徹底期間を置いて、8月末までは未納でも延滞にはならない、9月からは未納の延滞扱いが再開されることになります。
それがとくに学費ローンの残債がある世帯にどれほど深刻な影響を及ぼすかを暗示しているのが、次の2枚組グラフです。
2010年末から2020年初めまでの10年強にわたって、学費ローンは通常の30日以上延滞率でも、90日以上の重度延滞率でも断トツでした。それが、2020年半ばから魔法でもかけたように急落したのは、まさに未納を延滞扱いしないという特例措置のおかげです。
また、学費ローンに90日以上という重度の延滞が多かった理由のひとつが、学費ローンの性質上延滞から債務不履行に切り換えたとしても、差し押さえて競売で資金回収ができるような担保物件がないという事情も存在します。
学費ローンを未納にしたままでいた世帯の多くは、それまで学費ローンの返済負担がきついので、欲しくても買えなかったモノを買ってしまった可能性が高いのです。経過金利はいっさいなしでも、今年の9月から毎月返済を続けることができない世帯が続出するでしょう。
「2007~09年の国際金融危機で急上昇したクレジットカード・ローンの延滞に懲りて、その後クレジットカード債務には慎重になった人が多い。学費ローンに関しても同じように経験に学んで今後慎重に行動するようになるだろう」とおっしゃる方もいます。
ですが、痛い経験から学んでクレジットカード・ローンの延滞率が下がったのとは違って、学費ローン延滞率の急低下は民主党バイデン政権による制度いじりの結果なのです。
この政権を支持するリベラル派の人たちは「なんとか制度を工夫すれば、本来返さなければいけないローン負担を帳消しにすることもできる」という身勝手な発想をする人が多いような気がします。