私は、昨今の東京の再開発に対して、「これでいいのかな?」という思い自体は持ってるんですよ。
東京ミッドタウン(一個目の六本木のやつ)とか、六本木ヒルズとか表参道ヒルズぐらいの時には結構いいなと思っていたんですが、なんだかだんだん思考停止的に「一つ覚え」でワンパターンに同じようなのを次々建てているところがあるんじゃないか?という感じはしている。
同じように感じている人も多いのではないかと思います。
そういうところで、吹田スタジアムのように「草の根のいろんな人の思い」が結実して、細部までサッカーファンのために工夫された「俺たちのスタジアム」ができた…という事例には希望を感じる。
今回の外苑の例がどうなるかはともかく、今後のこういう計画において、あるいは日本の政治全体について、「吹田スタジアムのようなプラン」が増えてほしいという事は、あらゆる人が願うことではないかと思います。
そのために何が必要かといえば、もちろん「実際に施策を動かしている当局者」側がもっと聞く耳を持つことも大事ですが、一方でそれに「反対する側」も逆側から歩み寄り、「両側からトンネルを掘っていく」ことでしかこの問題は解決できません。
ここまで書いてきたように「反対する側」がもっとやらないといけないことは、
A・まず「現行案」が策定されて支持されている理由を理解する B・「イコモス案」の実行上の課題がどこにあるのかを理解する C・「イコモス案」の実行上の課題を解決できる方法を考える
…というようなプロセスを真剣に踏むべきだということです。
今はここが「知の巨人症候群」みたいな無責任さが放置されている結果、逆に「当局者」は現実をグリップするためにどんどん高圧的になっていくし、全体としてやたら”反リベラル的””国粋主義”的な風潮を止めることができなくなってしまっている。
読者のあなたが今、この「対立」のどちらがわにいる人かはわかりません。「反対者(いわゆる左?)」側か、「当局者側(いわゆる右?)」か。
しかし私が提案したいのは、「この記事をここまで読める人かどうか」という線引きをもっと大事にするべきだと思います。
反対者側の運動参加者が、
この問題がなぜ難しくて、どこを超えればイコモス案が実現できるのか?
を深く理解し、
必要な金額はプランAなら●●億円、プランBなら✗✗億円で、それをどうやって捻出すればいいか一緒に考えてください
…という一番コアな部分の課題に明確にコミットして呼びかけを行うのなら、今は「保守派側」にいて、反対派に対して「しゃらくせえな」と思っている人でも何かしらのアイデアを持ち寄りたくなるはずです。
昨今の金融スキーム技術は結構魔術的なものがあるので、本当のプロを味方につけることができれば、理想と現実をすり合わせられる奇跡的なプランを見いだせるかも。
そうやって問題に真正面から向き合わず、
俺たちは高潔で善人で正義の市民だけど、日本の政府は悪辣で私利私欲しかないクズどもに違いないというファンタジー
…を振り回している限り、そういう運動が人々の大きな支持を得る事もないし、その先で再度の「リベラル派」による政権交代を実現することは決してありえないでしょう。
とはいえ、最近はこういう「知の巨人症候群」のバカバカしさが白日の下に晒されつつありますし、その自然な結果として逆にその無責任さに対抗して現実をグリップするための防波堤として今まで必要だった「あまりにも国粋主義的でヤバい」人たちの居場所も徐々に削られてきているように思います。
昨今、選挙のたびに「右も左も」内輪もめが激しくなっていますが、それは「日本社会が新しい共有軸を見出していくために必要なプロセス」としてそうなっていくだろう…という話を私は一年ちょっと前に出した以下の本の後半部分で詳しく書いています。
『日本人のための議論と対話の教科書』
刊行後一年たって、「倉本さんが言ったとおりになってきてますね!」とか「予言者ですねwww」などという声を最近毎日ってぐらい聞くので(笑)、ぜひあなたも読んでいただいて、この記事で書いたような「対立を乗り越えるアプローチ」=「メタ正義感覚」を身に着けていただければと思います。
単に「俺達は正義であいつらは悪だ」を賢そうに隠蔽して言ってるだけの空理空論を一緒に乗り越えて、「みんなのほんとうのさいわい」のために本当の理想を目指して頑張っていきましょう。
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つづきはnoteにて(倉本圭造のひとりごとマガジン)。
編集部より:この記事は経営コンサルタント・経済思想家の倉本圭造氏のnote 2023年4月30日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は倉本圭造氏のnoteをご覧ください。