まず怪しいのは、ADHDに顕著な効能を示すとされているメチルフェニデートの消費量があまりにもアメリカ1国に偏っていることです。
アメリカ社会に「注意力が散漫でじっとしているのが苦手な子ども」を大勢生み出す要因があるのかもしれないとも思いますが、それにしても全世界の消費量の85%を地球人口の4.1%の人口しかない国だけで消費しているというのは、やはり不思議です。
さらに、1990年代末以降もADHDと診断される人たちの全人口に占める比率は上昇しつづけています。
ところが、かつてはほぼ唯一の特効薬とまで呼ばれていたリタリンを服用している子どもたちの比率は、延々と下がりつづけているのです。
こちらについては、同じメチルフェニデート製剤でも、服用したあと有効成分を体内で徐々に放出する工夫をしたので服用回数を少なくして、依存症形成リスクも低めたと言われる「徐放性」のコンサータという薬がリタリンからシェアを奪っているのかもしれません。
ですが、2001年にはADHDの子どもたちの約3分の2がリタリンを服用していたのに、2018年にはその比率が8%に下がっているのは、やはり不自然な気がします。
ADHDという病気は依存症形成リスクの大きな薬品を処方しなくてもいいケースがかなり多い病気だという認識が浸透してきたのではないでしょうか。
それでもマーケットリサーチは高成長を予測ただ、すでに異常なほどADHD症例の多いアメリカ国内でさえ、マーケットリサ―チ企業は「そろそろリスクの高い覚醒剤系医薬品の売上は横ばいにとどまるようになるけれども、それ以外の医薬品の高成長は続く」といった強気の予測を出しています。
もともとリタリンという薬の寿命を延ばすために多くの症例が発見されるようになったADHDが、さすがに覚醒剤を常用することの危険が知れ渡ると、今度は覚醒剤以外の医薬品の売り上げ成長に貢献すると予測されているわけです。
また、以前は総人口に占めるADHD患者の比率がアメリカよりはるかに低かったヨーロッパ諸国やアジア太平洋諸国でもADHDの症例は増えていき、医薬品市場の中で高成長を維持する分野にとどまると期待されているわけです。
こちらでは、2022年に161億ドルだったADHDの市場規模が2030年代初頭、つまり今後10年以内に倍増しているだろうというかなり強気の予測となっています。
私がADHDは完全に医療関係者や製薬会社がつくり出した病気ではないにせよ、彼らの宣伝によって大きく患者数を増やした病気だと確信したのは「ADHDと診断され薬品投与を受けている子どもたちの両親によるレポート 2003~11年」という医学論文を読んだためです。
この論文の中で、ADHDの子どもたちの比率を、人種・民族系統や家庭内で日常会話に使っていることばの違いに応じてグループごとに算出した箇所があります。その概要は次のとおりでした。
白人世帯では12.2%、黒人世帯では11.9%、ヒスパニック世帯では6.9%でした。なんとなくラテン系の人たちは移り気で、行動派のイメージがありますが、統計はまったく逆の数字を出しています。ここまでは、人を偏見で判断してはいけないということかもしれません。
しかし、家庭内の日常会話を英語でしている世帯では12.4%、それ以外のことばでしている世帯では2.7%と大きな差が付いているのです。
小学校低学年のころに児童がADHDだと判定されるきっかけの多くが授業中に先生の話を聞かないでいることだそうですが、あまり英語ができないのでそうなることが多そうな日常生活で別のことばを使っている家の子どもが、これほどADHD発症率が低いのです。
これはもう、製薬会社のコマーシャルやニュース報道などでADHDということばが出てきても、それが何を意味するかわからない、あるいは興味を持たない家庭で育った子どものほうがADHD発症率が低いことの歴然たる証拠ではないでしょうか。
そしてADHDの多くが、知らないとか関心が低いという理由で発見されないでいれば、それなりに成人に近づくにつれて症状そのものも弱まっていく程度の病状であることが多いのではないでしょうか。