投資信託のリスクはマイナスの面があればプラスの面もある。投資信託のリスクとは何か。リスクを下げるにはどうしたらいいのかを詳しくみていこう。
目次
1.投資信託のリスクには値上がりも含む
2.投資信託での主な6つのリスク
3.投資信託のリスクを下げるための3つのポイント
4.投資信託でリスクヘッジする3つの方法
5.リスクとうまく付き合いながら行う
1.投資信託のリスクには値下がりだけでなく値上がりの可能性も含む
投資信託などの金融商品のリスクとは自然災害などのリスクとはイメージが少し異なる。投資信託のリスクは値下がりによる損失だけでなく、値上がりにより利益の可能性をも含む。
投資信託のリスクとは値動きの振れ幅のこと
投資信託のリスクとは値動きの振れ幅のことである。投資信託のほとんどは基準価額(投資信託の値段)が上昇や下落を繰り返す。振れ幅が大きい金融商品はリスクが大きい。
たとえば基準価額の平均が1万円の投資信託AとBがあるとする。過去の値動きの振れ幅がAは9,000円から1万1,000円、Bは5,000円から1万5,000円の場合には、Bのほうが大きな振れ幅のためリスクが大きい商品といえる。
リスクとリターンには相関関係がある
リターンとは投資により得る収益のことだ。投資信託を買った基準価額より売った基準価額が高ければプラスのリターン、買った基準価額より売った基準価額が低ければマイナスのリターンになる。
リスクが大きな商品はリターンが大きくなるためハイリスク・ハイリターンといわれ、リスクが小さな商品はリターンが小さくなるためローリスク・ローリターンといわれる。大きなリターンを期待してリスクが大きな商品へ投資すると、大きな利益を得ることもあれば、逆に大きな損失を出す可能性もある。
投資信託は商品により投資対象が異なり、投資対象によりリスクの大きさが違う。投資信託選びでは自分の投資目的に合うリスクの商品を選ぶことが大切だ。
2.投資信託の基準価額変動をもたらす6つのリスク
投資信託の基準価額は変動する。そのため投資信託に元本保証はない。投資信託の基準価額の変動をもたらす6つのリスクを紹介する。
投資信託のリスク1……金融商品の価格変動による価格変動リスク
価格変動リスクとは資産として組み入れている株式や債券などの価格が変動するリスクだ。株式や債券などは不確実に値上がりや値下がりする。
投資信託が保有する株式や債券の価格が下落すると、投資信託の基準価額の下落要因になる。
投資信託のリスク2……外国の資産額が変動する為替変動リスク
為替変動リスクとは為替レート(米ドル/円など)が変動するリスクだ。外国の株式や債券などに投資する投資信託は一般的に円高では基準価額がマイナスへ、円安では基準価額がプラスへの影響がある。
たとえば1米ドル100円のときに100万円(手数料は除く)で購入した1万米ドル分の資産があるとする。為替が円高の1米ドル90円になると日本円換算の資産価値は90万円へと減少してマイナスになる。
投資信託のリスク3……主に債券価格に影響する金利変動リスク
金利変動リスクとは、その名のとおり金利が変動するリスクだ。金利変動リスクは主に債券価格に影響する。
一般的に金利が上がると債券価格は下落し、金利が下がると債券価格は上昇する。
投資信託のリスク4……売買が制限されることがある流動性リスク
流動性リスクとは金融資産の取引のときに、売買機会や制約条件のために市場の期待値より不利な価格で取引が行われることだ。
流動性が高いということは、いつでも多くの売買が可能である。流動性が低いとは市場の需要や供給が不足している場合や取引規制などにより、売買時期が限定されて約定数量が不十分な状態だ。
流動性が低ければ流動性リスクの可能性が高まり、資産の売買が不利な価格で行われ、損失を出すことがある。
投資信託のリスク5……投資した資金が戻らないことがある信用リスク
信用リスクとは企業の経営不振などにより債務が回収できなくなることだ。株式や社債へ投資した企業が破綻すれば、投資した資金が戻らない可能性がある。
なお信用リスクには企業だけでなく国家のリスクも含むことがあるが、国家の信用リスクは次のカントリーリスクで解説する。
投資信託のリスク6……金融危機につながることがあるカントリーリスク
カントリーリスクとは投資対象の国・地域にて政治・経済の変化により為替や証券市場に混乱が発生し、資産価値が変動するリスクのことだ。
具体的に通貨の急落や急激なインフレ、国債の債務不履行(デフォルト:元利金を払えなくなること)などだ。カントリーリスクの影響は金融危機に発展することもある。
2008年に米国のサブプライムローン問題から米大手証券会社のリーマン・ブラザーズが経営破綻したリーマン・ショックがそれだ。2010年にギリシャの債務問題が欧州に広まった欧州危機などもカントリーリスクから顕在化した危機だと考えられる。
投資信託のリスク把握には目論見書を確認する
投資信託のリスクはファンドの目論見書(投資信託説明書)で確認できる。目論見書にその投資信託の「価格変動」「為替変動」「金利変動」「流動性」「信用」「カントリー」などのリスクが具体的に示されている。また目論見書で年間騰落率と基準価額の推移や、代表的な資産クラスとの騰落率の比較をグラフで確認できる。
代表的な資産クラスは日本株、先進国株、新興国株、日本国債、先進国債、新興国債などだ。投資信託のリスクを視覚的に確認できることはリスク把握に役立つ。
投資信託を選ぶときには目論見書を確認して、その投資信託のリスクを把握することが望ましい。
3.投資信託のリスクを下げるために重要な3つのポイント
投資はリスクをコントロールすることが大切だ。投資信託の資産のリスクを下げるための3つのポイントを紹介する。
投資信託のリスクを下げるポイント1……資産を分散する
投資信託では資金をひとつの金融資産に投資するのではなく、さまざまな資産に分散して投資することでリスクが分散されて投資が安定する。投資信託の投資対象は国内や海外の株式・債券・REIT(不動産投資信託)やコモディティ(ゴールドや原油などの商品)など豊富だ。
異なる投資対象の投資信託を複数組み合わせて保有すれば資産の分散になる。また複数の資産を投資対象に組み込むバランス型投資信託なら、ひとつの投資信託で資産分散が可能だ。
投資信託のリスクを下げるポイント2……時間を分散する
投資信託では資産を一度にまとめて購入せずに複数回に分けての購入や日、週、月などの定期的な積立購入により投資タイミング(時間)の分散が可能だ。投資タイミングの分散により高値つかみのリスクを低減でき、購入価格を抑える効果を期待できる。
投資信託の積立購入では基準価額が高いときには購入口数が少なく、基準価額が低いときには購入口数が多くなる。これが購入する基準価額の平均を下げる。
積立購入のように金融商品を一定額ずつ分割して購入し、平均の購入基準価額を抑えることをドル・コスト平均法という。
投資信託のリスクを下げるポイント3……長期で投資する
投資信託の基準価額は短期間では一時的な要因で大きく変動することがある。長期間の投資では一時的な変動要因が平準化されて、価格変動リスクを抑える効果を期待できる。
一時的な値動きからリターンを得たいならば短期の投資を選べばよいし、安定した資産運用を望むなら長期の投資を選びたい。
4.投資信託でリスクヘッジする3つの方法
投資ではこれから起こりうるリスクを予測してリスクへ備えることが可能だ。これをリスクヘッジという。リスクヘッジはさまざまな金融商品の取引で行える。
ここでは金融商品として投資信託のみを利用したリスクヘッジの3つの方法を紹介する。
投資信託のリスクヘッジ方法1……現金の保有比率をコントロールする
リスクヘッジの方法のひとつはリスク資産の投資信託と現金の保有比率をコントロールすることだ。投資信託を換金して減らし、現金を増やせば投資リスクは下がる。
たとえば投資の神様といわれるウォーレン・バフェット氏率いるバークシャー・ハサウェイは、コロナ危機前の2019年後半に過去最高の現金を保有すると伝えられた。
バフェット氏のような資産配分の調整をまねるのは簡単ではないが参考にしたい。
投資信託のリスクヘッジ方法2……貴金属(ゴールド)の投資信託を保有する
相場の影響により株やREIT(不動産投資信託)などの投資信託が暴落しても、それらとは相関性が低い貴金属の投資信託の保有はリスクヘッジになる。
ゴールド(金)は普遍的な価値を持ち、経済危機などのときでも無価値にならない安全資産と考えられる。このため株などが下落する局面で資金が集まり、金価格が上昇することがある。
コロナ危機でゴールド以外の貴金属の値動きを確認すると、2020年6月末時点では、プラチナ、シルバー(銀)、パラジウムの3種は株価との相関性が認められ、リスクヘッジの資産として適切ではない。
貴金属の投資信託をリスクヘッジに利用するならば、ゴールドの投資信託が適切だ。
投資信託のリスクヘッジ方法3……ベア型の投資信託を短期で保有する
ブルとベアとは相場の強気と弱気を表す言葉だ。ブル型は相場上昇時に上昇し、ベア型は相場下落時に上昇する商品である。相場とは逆の値動きをするベア型の投資信託を保有することでリスクヘッジになる。
ベア型で気を付けるべきポイントはベア型にはインデックス(指標)の数倍の値動きをするレバレッジ投資信託があり、その商品はハイリスクになることだ。またベア型の商品は一般的に減価する。たとえば日経平均株価がレンジ内の上下を続けると、日経平均株価をインデックスにするベア型投資信託は基準価額が下落する傾向がある。
ベア型投資信託は減価の傾向があるため長く保有すべきではない。リスクヘッジとしての利用で短期のみの保有に制限したい。
5.投資信託にかぎらず投資はリスクとうまく付き合いながら行うもの
投資信託はリスクを受け入れてリターンを期待するものであり、リスクとの付き合い方が非常に大切だ。はじめに紹介したようにリスクは値動きの振れ幅のことで、損失だけでなく利益をもたらす。
投資信託で予想外の損失を出した場合は、リスクと間違った付き合い方をしていたということだ。そのときはリスクとの付き合い方を考え直し、リスクを適切にコントロールするようにしよう。
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