ロシア軍によるウクライナ侵攻によって久しぶりに大戦争勃発の危機が近づいた2022年度(2021年10月~2022年9月)には、研究開発検証評価予算はさらに拡大していました。
国防費総額7789億ドルの15.3%、兵器弾薬資器材調達費1390億ドルに対しては実に85.5%に当たる1188億ドルに達していたのです。軍需産業各社は決して研究開発費をけちっているわけではありません。むしろ、莫大な金額を遣っています。
ただ、その金額を自社が負担するのではなくて「親方星条旗」でアメリカ国民にツケを回しているのです。自社負担で大きな研究開発プロジェクトを推進して、結局モノにならなければ、全額自社の損失になります。
ところが、国防総省を通じて国民の税金で払ってもらうことができれば、損失は自社ではなく国民がかぶることになります。失敗した研究開発プロジェクトのコストに自社の中間マージンを上乗せ請求してそれが通れば、利益を押し上げることにもなります。
このあまりにも受注側にとって有利な環境に慣れ切っているからこそ、ボーイング社が737 Maxを市場に投入する際にも、多少の失敗は取り返すことができるという安易なスタンスで臨んでしまったのではないかと思います。
次回の後編では、軍需産業と並んで合法的贈収賄をフル活用している製薬業界の事例などを通じて、アメリカ経済はもはや自由競争の市場経済ではなくカネとコネがすべての利権経済になってしまったことを論じます。
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編集部より:この記事は増田悦佐氏のブログ「読みたいから書き、書きたいから調べるーー増田悦佐の珍事・奇書探訪」2023年5月1日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は「読みたいから書き、書きたいから調べるーー増田悦佐の珍事・奇書探訪」をご覧ください。