こんにちは。
まず先週の木曜日を予定していたこの記事の投稿が大変遅れてしまったことを、深くお詫び申し上げます。
2020~21年は、アメリカ社会が抱えていた病巣がさまざまなかたちで一挙に政治・経済・社会を揺るがす問題として噴出した、特異な2年間でした。
今回は1946年にロビイング規制法という名の贈収賄奨励法が制定されて以来甘やかされ放題で成長してきたアメリカの軍需産業が、ついに破局を迎えた2年間として2020~21年をふり返ってみたいと思います。
なお、非常に広い分野に影響を及ぼす問題なので、2回にわけてお届けします。

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まず、アメリカの軍需産業(国防産業とも言います)がいかに安定して高い利益率を誇ってきた業界だったかというところからふり返ってみましょう。
この表の原資料は、国防総省が大手から中小まで計50社の出入り軍需産業各社に対するかなり詳細な発注状況を調査したデータです。
上段をご覧いただくと、2000~19年の20年間は売上規模が10億ドルに達しない中小規模の企業に営業赤字が出ることはあっても、全体としてかなり高い利益率で推移してきたことが推測できる数字になっています。
中でも、売上規模が100億ドルを超える大手8社——2020年以降はレイセオン社がレイセオン・テクノロジー社に吸収されたので大手7社になりました――については、2010~19年の10年間米国籍で軍需主体の企業はすべて2ケタの営業利益をあげていたことがわかります。
下段1行目のボーイング社は軍需より民間航空会社に旅客機に納入するほうが主体の企業です。3行目のテクストロン社は、傘下にヘリコプターのベル社、軽飛行機のセスナ社、ビーチクラフト社を擁し、こちらも民需主導型です。またBAEはイギリスを本拠とする企業です。
そうした中で、2020年以降は突如アメリカ軍需産業の中でも総売上で言えば最大級のボーイング社が急激に軍需産業全体の収益性を押し下げることになりました。
2020年以降あまりにも多くの大ニュースが報道されたためにお忘れの方がいらっしゃるかもしれませんが、2018~19年、2年連続でボーイング社の最新型旅客機737 Maxが乗員・乗客合わせて200名近い犠牲者を出す墜落事故を起こしたことが、直接の原因です。