逆に1990年代以降は、中央値を下回る年のほうが多くなっています。時には新たな借入金と過去の借入の返済がほぼゼロになったり、新規借入より過去の借入を返済する額のほうが多くなったりもしています。それが、マイナスのシェアが意味することです。

私はアメリカだけではなく、先進諸国の銀行はすべて徐々にダウンサイジングをして、あまり巨額の投資を必要としないサービス業主導経済にふさわしいスリムな業界に変身すべきだと考えています。

日本の銀行業界などは、1980年代末のバブル期に比べれば、融資総額にしても営業収益にしてもずいぶんGDPに占めるシェアを減らしてきて、世界中の銀行業界のお手本だと思うのですが、経営陣の方々はどうやらそれがご不満の様子です。

Fedのミルク補給で安全に稼げていた米大手銀行

アメリカの銀行業界が順調に業績を伸ばしてきたように見えるのは、銀行が連邦準備制度(Fed)に開いた口座に法律で定められた以上の準備を置いたり、Fedに1晩だけアメリカ国債を貸したりすると、低金利のご時世では破格の高金利を受け取れていたからです。

保有している米国債を連邦準備銀行に1泊させるだけで金利が稼げる仕組みのことをリバースレポといいます。Fedがフェデラルファンド金利を急上昇させていたうちは、リスクゼロで、しかも高金利が稼げるということで銀行にも迷う余地がありませんでした。

ところが、直近ではリスクを取る気さえあれば、もう少し大きな利ざやが稼げる状況に少しずつ変わりつつあります。

ご覧のとおり、リスクを取って一般企業の発行した社債を買うより、ノーリスクの超過準備やリバースレポのほうが高い金利を稼げるという異常事態がようやく終わろうとしているのです。

銀行業界には、ここで積極的にリスクを取る運用をする準備ができているでしょうか。残念ながら、私は無理だと思います。

先ほどご紹介したとおり、すでに証券投資で出した莫大な含み損があります。それに加えて、企業向け融資の中でもかなりリスクを伴う商業不動産向け融資が、今後本格的に焦げ付く可能性が非常に高いのです。