<中国、強いドル、コロナ、不足、景気後退などのキーワード評価>
キーワード別動向をみると、「新型コロナウイルス」が6回登場し、2020年3月以降で初めて「新型コロナウイルス」の言葉のゼロとなった前回から増えたが、これは「コロナ前」などポジティブな表現で使用されたためである。
「中国」は前回に続き1回使用され、アトランタが粉ミルクの輸出減少による乳製品の需要低下を指摘していた。
「強いドル」は1回のみ登場、前回の3回から減少した。使用回数3回というのは、少なくとも2019年以降で最多となる。今回はサンフランシスコが使用、ドル高による需要低下が輸送機関のボトルネック解消につながったと報告された。なお、2022年は「強いドル」が6月に使われた後、同年7、9、10月のゼロを経て、前回22年11月は2回登場した。
チャート:今回、コロナの文言が復活したものの正常化を表す表現で使用された
(作成:My Big Apple NY)
「不足」との言葉は今回7回と前回の19回を下回り、2020年7月以来の低水準となった。7回のうち、人手不足が5回を占め、供給制約の緩和が明確になった。米2月ISM製造業景況指数でも、受注残や入荷遅延が50割れを続けるように供給制約は緩和を確認、仕入れ価格のみ上昇していた。
チャート:不足の登場回数は19回、20年7月以来の低水準
(作成:My Big Apple NY)
チャート:米2月ISM製造業景況指数、仕入れ価格以外が供給制約の緩和を示す
(作成:My Big Apple NY)
「景気後退(recession)」の言葉は3回と、前回の10回を大きく下回った。利上げが開始した22年3月以来で2番目に少なかった。逆に「不確実性(uncertain)」の登場回数は、前回の15回から22回へ増えた。
チャート:前回と逆に景気後退の登場回数は前回から増加し、不確実性の文言は減少
(作成:My Big Apple NY)
「景気後退」が登場例をみると、今回は3地区連銀で使用され、前回の5地区連銀(ボストン、クリーブランド、シカゴ、セントルイス、ダラス)から減少した。今回、クリーブランド、セントルイス、ダラスが抜けたが、新たにリッチモンドが加わった。なお、景気後退として数えた対象はリセッションのリスクに関する言及のみで、景気後退水準などといったものはカウントしていない。以下、()内は登場した報告書内の項目を表す。
・ボストン地区連銀 1回、前回は2回 →(労働市場)一部の企業は景気後退懸念から直接雇用に躊躇したが、人材派遣からの採用が一般的だった。
・リッチモンド地区連銀 1回、前回はゼロ →(非金融サービス)回答者は、顧客が抱くインフレや景気後退への懸念が、自社の業務レベルに影響を及ぼしているとの考えを寄せた。
・シカゴ地区連銀 1回、前回は1回 →(総括) 回答者は概して数カ月先の鈍い成長を予想したが、多くは今年、潜在的な景気後退に陥る懸念を示した。