高校生のうちに読んでおきたい小説8冊

高校生のうちに読んでおきたい小説を8冊紹介します。面白さはもちろん、会話のタネになるような本や自分の考え方を見つめなおすきっかけになるような、人生を豊かにしてくれる8つの物語を厳選しました。

博士の愛した数式

『博士の愛した数式』は映画化もされた、小川洋子さんの代表作です。小川洋子さんは心にスッと入ってくる文体と、少し不思議な世界観を醸し出すのがうまい作家です。彼女の作品にはスッキリとした読後感があります。

本書は80分しか記憶が続かない数学者が、息子や家政婦と少しずつ心を通わせていく物語です。

切なさと悲しさの中に、人の気遣いや心のあたたかさを感じられると、多くの人に感動を与えてきました。

ホテルアイリス

『ホテルアイリス』も小川洋子さんの作品で、海外の場末感のただよう小さなホテルが舞台です。ここで働く主人公の少女と、どこか怪しげな中年男の恋を描いた作品です。

小川洋子さんはどこかファンタジー感のある不思議な世界観を描くのが得意で、本作も夏の話でありながら暑さやじめじめとした感じのしない、クールな雰囲気で進んでいきます。

小川洋子さんの作品の中では異色であり、ファンの中でも評価が分かれる作品ですが、独特の世界観にどっぷりと浸かれるでしょう。

小説 言の葉の庭

『小説 言の葉の庭』は深海誠監督の映画『言の葉の庭』を、監督自らの手でノベライズした小説です。映画本編は46分と短編ですが、本作は396ページにも渡る長編。映画では描かれなかった脇役たちの人物像やエピソードが、丁寧に織り込まれています。

深海誠監督は『言の葉の庭』以外の映画作品も自らノベライズしていますが、特に本作は、脇役たちを深く掘り下げた作品です。小説を読むことで映画の見方が変わり、より深く楽しめるようになるでしょう。

小説 天気の子

『小説 天気の子』も、深海誠監督による映画作品のノベライズです。天気の子では子どもと大人の違いや、それぞれの苦悩が描かれています。特に大人の代表として描かれる須賀の内面が垣間見えることで、映画とは違った面白さを感じられるでしょう。

あとがきと解説も必読で、これらを読んだ後にもう一度映画を観ることで、ラストシーンがより心に響くようになるはずです。

人間失格/グッド・バイ 他一篇

『人間失格/グッド・バイ 他一篇』に収録された『人間失格』は、太宰治の代表作であり、彼の遺書ともいわれる作品です。小説として純粋に楽しみたいという人も、日本文学への教養を深めたいという人にもおすすめできます。

人間失格というタイトルとは裏腹に、主人公は人並み以上の弱さを抱えるものの、それと同じくらいに優しさをもった人物です。大なり小なり誰しも抱える人間の本質を赤裸々に描き出した作品で、ふと思い出して何度も読み返したくなる作品です。

なお、遺書というのは最後の作品という意味ではなく、彼自身の人生を土台にすえた私小説のような作品という意味で言われています。彼の最後の作品は『グッド・バイ』という未完の小説と、『如是我聞』という評論です。

『如是我聞』にも太宰治の内面が色濃く出ており、人間失格が気に入った人にはぜひ読んでもらいたい一冊です。岩波文庫出版の本書には、この3作品がすべて収録されています。

舟を編む

『舟を編む』は出版社を舞台にした小説で、映画化・アニメ化もされた作品です。

出版社の営業部で働いていた主人公は、言葉への鋭いセンスを買われ、辞書編集部に異動することになります。編集部には個性豊かな編集者=言葉のプロたちがおり、彼らは辞書作りに情熱をもち、それに没頭していきます。

本作の『舟を編む』は、「辞書は言葉の海を渡る舟、編集者はその海を渡る舟を編んでいく」という意味でつけられたそうです。

世界で最も難解な言語であり、単語数も多い(≒豊かな表現ができる)日本語という言葉の美しさに触れられる、人生の早い段階で読んでおきたい一冊です。

存在の耐えられない軽さ

『存在の耐えられない軽さ』は20世紀恋愛小説の最高傑作といわれる海外小説です。1988年に映画化もされました。

本書は不思議な三角関係と、それに苦悩する恋人たちの愛と転落を描いています。哲学的恋愛小説と呼ばれることも多く、読み進めるうちに、愛について考えを深めていけるでしょう。

人生の重さや自分自身の内面に苦しみを抱えている人ほど共感でき、読了後に心が軽くなると評価されています。

アルジャーノンに花束を〔新版〕

『アルジャーノンに花束を〔新版〕』は、国内外で何度も映画化された作品の原作小説を、新たに翻訳したものです。新版の訳はわかりやすく、作品に没頭できるとの評価も多いです。

主人公は32歳になっても幼児並みの知能しかない青年で、彼が手術により天才なみの知能を手に入れていく過程を描きます。彼は知能を手に入れる過程で、自分の美徳を少しずつ失っていきます。

人間としての在り方や幸福を問う、折に触れて何度でも読み返したい一冊です。

ちなみに、映画版はこちらがおすすめ。もちろん好みは人それぞれですが、フランス映画ならではの芸術作品らしい映像と空気感、物語が淡々と進む没入感がたまりません。