セクシャルハラスメントとの違いは「性的な言動」の有無

セクシャルハラスメントとの違いは、性的な言動の有無だ。ジェンダーハラスメントは「性別に関係するハラスメント」ではあるが、性的な言動は含まれないものを指す。逆にいえば、性的な言動が含まれていなくてもジェンダーハラスメントになり得るわけだ。

ただし、国家公務員のルールを定めた人事院規則の「セクシュアル・ハラスメントの防止等」の運用に関する通知では、セクシャルハラスメントになり得る言動として、性別により差別しようとする意識などに基づく発言も挙げている。

具体的には、「男のくせに根性がない」「女には仕事を任せられない」「女性は職場の花でありさえすればいい」といった発言や、「男の子、女の子」「僕、坊や、お嬢さん」「おじさん、おばさん」といった呼び方がそれにあたる。

また、性的指向や性自認をからかったり、それを本人の承諾なしに第三者に漏らしたりすることもセクシャルハラスメントの一例として挙げられている。

これらの通知内容は、セクシャルハラスメントの防止を定めた従来の人事院規則によって、ジェンダーハラスメントにも対応するための措置と思われる。いずれにせよ、ジェンダーハラスメントとセクシャルハラスメントは地続きの問題であることは間違いない。

なお、女性社員にだけお茶汲みをさせるような慣習は、男女雇用機会均等法ではっきり禁止されている。お茶汲みだけでなく、性別を理由にして労働者の配置や昇進・降格、教育訓練の内容などを決めてはならない。

さらに、同法の指針ではその具体例として、女性社員に限って「内勤業務にのみ従事させる」「会議の庶務、お茶汲み、そうじ当番等の雑務を行わせる」ことなどを挙げている。

ジェンダーハラスメント加害者の最多は「上司」

総合転職エージェントの株式会社ワークポートは、全国のビジネスパーソン446人(20~40代・男女)を対象に、職場の「ジェンダーハラスメント」の実態に関するアンケート調査を2023年2月に実施した。そのデータも紹介しよう。

ジェンダーハラスメントを受けたことがあるか

現在の勤務先、または直近の勤務先でジェンダーハラスメントを受けたことがある人は全体の27.6%。被害に遭った人のうち、84.6%は上司から受けていた。

加害者については上司の他、同僚27.6%、顧客・取引先18.7%、部下8.1%、その他5.7%という結果だった。

どんなジェンダーハラスメントを受けたか

ジェンダーハラスメントの内容については、性別による役割分業、「女性らしさ」「男性らしさ」の強要、働き方の差別やキャリアアップや昇進面での不当な扱いなどが挙がった。

女性に対するジェンダーハラスメントの具体例としては、「スカート、ワンピースなど女性らしい服装を心がけるように言われた」(30代女性)、「女性だから男性を立てるようにと指導された」(40代女性)、「営業成績が良いと、女性だからどんな手を使ったのかと聞かれた」(30代女性)などの声が寄せられた。

一方で男性に対するジェンダーハラスメントもあり、「男性は残業を強要される」(40代男性)、「男なのになんでこれができないんだ、女らしくて気持ち悪いとの発言」(20代男性)、「男だから泣き言を言わず働けと言われた」(20代男性)などの声が寄せられている。

相手の立場を正しく想像することがハラスメント回避の秘訣

新しい「○○ハラスメント」の概念が出てくると、「あれもダメ」「これもダメ」と難癖をつけられているように感じる人もいるかもしれない。しかし、こうしたハラスメントへの理解は、結果的には互いに快く働ける職場環境づくりにつながる。

何がハラスメントになるのかを気にしなくても、相手の立場を正しく想像できれば、何を言われたりされたりしたくないか自ずとわかるはずだ。

また、「それくらい我慢しろ」は禁句としたい。誰かに我慢を強いる職場ではなく、なるべく我慢の必要がない職場づくりを心がけることで社員の勤労意欲は増し、心身の健全も保たれやすくなる。また、業務の円滑化も図られるだろう。

文・モリソウイチロウ(ライター)
「ZUU online」をはじめ、さまざまな金融・経済専門サイトに寄稿。特にクレジットカード分野では専門サイトでの執筆経験もあり。雑誌、書籍、テレビ、ラジオ、企業広報サイトなどに編集・ライターとして関わってきた経験を持つ。

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